長野県のニュース

混迷のドイツ 政治空白の解消を急げ

 9月の総選挙に勝利したドイツのメルケル首相が厳しい立場に置かれている。

 安定政権の実現に向けた連立協議がまとまらず政治空白が続いているためだ。欧州連合(EU)の要であるドイツの混迷は、結束にほころびが出てきたEUの亀裂を深め、世界の政治や経済の不安要素になりかねない。

 メルケル氏をはじめとする政治指導者は党利党略に流されることなく、培ってきた価値観を第一に考えてもらいたい。

 先の総選挙でメルケル氏が率いる保守、キリスト教民主・社会同盟(CDU・CSU)は第1党の座を維持したけれど、単独過半数には届かなかった。

 このため、環境政党などとの3党連立を目指して協議を進めた。結局、重要課題の難民・移民問題や環境政策などで溝を埋められず決裂してしまった。

 こうした中、社会民主党(SPD)のシュルツ党首が先日連立に向けた対話に応じるとの声明を発表した。メルケル氏も連立を模索する方針を表明し、近く会談する見通しとされる。

 SPDは2005〜09年と13〜17年にわたってCDU・CSUと連立を組んだ経緯がある。政権内で存在感を示せなかったとし、野党として出直すことを決めていた。今も政権への参加に反対する党員は多く、協議がうまくいくかどうか、予断を許さない。

 先の総選挙では、排外主義をあおった新興右派の「ドイツのための選択肢(AfD)」が第3党に躍進し、初めて国政進出を果たしている。仮に連立協議がまとまらず、再選挙に踏み切った場合、国際社会に影響力のあるメルケル氏の政治生命が断たれたり、AfDのさらなる勢力拡大を招いたりすることも考えられる。

 戦後ドイツの政治は、ユダヤ人を虐殺したナチス・ドイツ時代を反省し、極右思想が広がることを強く警戒してきた。難民に対する寛容な姿勢や政策の基本もそこに根差している。

 ドイツは、世界に広がる排外主義に対するとりでの役割を担ってきたことを忘れてはならない。自国第一主義が広がる中、国際社会の接着剤として期待はますます高まっている。

 SPDは連立政権内で従属的な立場だったことに不満を募らせてきたけれど、CDU・CSUと一緒に仕事をしてきた政党である。ドイツばかりでなく、欧州を安定させるには、交渉の道が開けるかどうかが鍵を握りそうだ。

(11月28日)

最近の社説