長野県のニュース

斜面

地底の巨大な怪物が口を開けているようだ。米軍がかつて沖縄県読谷村に配備していた核ミサイルの地下発射基地である。当時の写真を見ると周りは畑が広がり集落もある。のどかな風景の下で米軍は常時発射できる体制を敷いていた

   ◆

米ソ対立が頂点に達した1962年10月のキューバ危機の最中。この基地に核巡航ミサイル「メースB」の発射命令が届いた。管制室は騒然とした。核戦争の恐怖に誰もがおののきながら準備を進めた。だが命令は誤りと分かり発射寸前で中止された―

   ◆

発射ボタンを管理していた元米兵が2年前、共同通信に明らかにした証言だ。誤発射や偶発的な使用が核戦争を招く恐れは今もある。米議会ではトランプ大統領に核のボタンを委ねていいのか議論が再燃している。ツイートするように気軽にボタンを押しかねないとの懸念からだ

   ◆

米大統領は発射命令を即座に出せるよう、暗号コードを記入したカード「ビスケット」を身に着け、「核のボタン」を帯同している。実際には「フットボール」と呼ばれる黒革のかばんで随行将兵が持ち歩く。攻撃の選択肢を示す手帳などが入っている

   ◆

読谷村で発射を回避できたのは、管制室の米兵が命令の内容に疑問を持ち真偽の確認を求めたからだ。機転が核戦争を防いだ。核のボタンの権限を分散するという意見が出るのも当然か。人類の命運を一人の権力者が握る。そんな理不尽な現実をトランプ氏があぶり出したのは皮肉である。

(11月29日)

最近の斜面