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日馬富士引退 横綱の暴力 責任は重く

 幕内優勝9回、712勝を積み重ねた横綱が土俵を去る。酒席で後輩力士に暴力を振るった問題の責任を取って、日馬富士関が現役引退を表明した。残念でならないが、やむを得まい。

 日馬富士はけがを負わせたことを認めている。警察は傷害容疑で書類送検する方針だ。力士の代表として範を示すべき横綱が暴力行為に及んだ事実は重い。

 とはいえ、これで一件落着ではない。なぜ事件は起きたのか。現場で何があったのか。真相は明らかでない。伝聞や臆測が飛び交い、釈然としないことばかりだ。

 また、日馬富士一人の問題として済ますわけにいかない。警察の捜査とは別に、日本相撲協会として全容をつまびらかにし、責任を明確にしなければならない。それを踏まえ、再発防止に角界を挙げて取り組む必要がある。

 同じモンゴル出身で平幕の貴ノ岩関の態度に腹を立て、素手のほかカラオケのリモコンで殴打したとされる。ただ、証言は食い違いも目立つ。当初はビール瓶で殴ったとされたが、同席していた横綱白鵬関は否定している。

 暴行があったのは秋巡業中だ。貴ノ岩の師匠である貴乃花親方は協会理事を務め、巡業部長の立場にある。ところが、警察に被害届を出しながら、協会には報告しなかった。理由は分からない。協会幹部が把握したのは警察から連絡を受けてである。

 当初重大視せず放置した協会の対応のまずさに加え、貴乃花親方がその後も不可解な行動を取り、混乱に拍車をかけている。協会は貴ノ岩の聴取を求めているが、協力を拒んだままだ。

 貴乃花親方は表立って何も語らず、貴ノ岩本人も姿を見せない。警察と協会に出した診断書は内容が異なり、けががどの程度重篤なのかもいまだにはっきりしない。協会は内紛の様相も帯び、自浄能力を示せていない。

 2007年に時津風部屋の力士が親方や兄弟子の暴行を受けて死亡した事件は、角界の暴力体質の根深さをあらわにした。10年を経ても払拭(ふっしょく)できていないことを今回の事件は映し出している。

 野球賭博や八百長が相次いで発覚し、一時は地に落ちた感があった相撲人気が大きく盛り返した矢先である。慢心があったとすれば戒めなくてはならない。

 内輪の理屈で事は収まらない。大相撲の将来を揺るがす事態である。その認識を共有し、確執を超えて相撲協会は問題解決に取り組んでもらいたい。

(11月30日)

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