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大糸線運行 住民ら支え 全線復旧から20年

中土駅に到着した列車に乗り込む男子高校生=29日午前7時18分、小谷村中土駅に到着した列車に乗り込む男子高校生=29日午前7時18分、小谷村
 1995年7月に県北部を襲った集中豪雨災害で寸断されたJR大糸線の南小谷(北安曇郡小谷村)―小滝(新潟県糸魚川市)間が復旧し、全線での運行が再開されてから29日で20年となった。廃線の危機を乗り越え、今も地域住民や観光客の足になっている同線。利用者数は低迷しているが、大糸線全線開通から60年の今年、小谷村を含む地元自治体は改めて誘客に取り組んでいる。

 29日午前7時すぎ、小谷村の中土(なかつち)駅に一両編成の上り普通列車が到着。乗り込んだのは大町市内の高校に通う男子生徒(17)の1人だけだった。週に2、3回利用。「一番身近な公共交通機関。駅がなくなったら困る」と話した。

 中土駅は、日本百名山の一つ、雨飾山への登山や塩の道の散策、山あいの温泉を目当てに訪れる観光客も利用。駅舎に置かれたノートには「博多南駅発中土駅着の片道乗車券でやってまいりました。JR西日本管理の一番西の駅より東の駅を目指してきました」「長野県にJR西日本があると考えるだけでわくわくします」などと、鉄道ファンとみられる書き込みも多い。

 95年7月11日から12日にかけて小谷村など県北部を集中豪雨が襲い、村内を流れる姫川が氾らん。鉄橋が流されたり、駅舎が土砂で埋まったりして南小谷―小滝間が不通になった。

 「復旧は不可能だと思った」と当時村長だった郷津久男さん(85)。それでも郷津さんは、JR西日本、国、県への陳情を粘り強く繰り返した。同社と長野、新潟両県は早期復旧の方針で合意。急ピッチで工事が進み、97年11月29日に復旧した。翌年2月の長野冬季五輪にも間に合った。

 現在、中土駅に止まる列車は上下7本ずつ。JR西日本によると、昨年の1日当たり平均乗車人数は2人で、北隣の北小谷駅(小谷村)も1人。沿線人口の減少とともに利用者も減っている。

 大糸線は57(昭和32)年、小滝―中土間が完成して全線開通となった。開通60年の節目を迎え、長野・新潟両県の沿線自治体などでつくる「大糸線利用促進輸送強化期成同盟会」は10月に松本―南小谷間で記念列車を運行し、大糸線をアピール。JR西日本も11月に糸魚川―南小谷間でリゾート列車を特別運行し、南小谷駅では地元住民らが横断幕や和太鼓などで歓迎した。

 小谷村では近年、外国からのスキー客が増えつつある。「車窓の景色を眺めながらゆったりと列車の旅を楽しめるのが大糸線の魅力」。村観光振興課の横沢勲課長はこう話し、長期滞在者が多い外国人観光客へのPRを強めるなど、新たなニーズを掘り起こそうと考えている。

 「いつまでもこの場所を走り続けてほしい」。郷津さんは自宅から見える大糸線を眺め、そう願っている。

(熊谷拓也)

(11月30日)

長野県のニュース(11月30日)