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1杯目は大きい茶わんにぬるい茶を、2杯目は量を減らして少し熱く、3杯目は小さな器で熱い茶を―。寺の小姓だった石田三成が、立ち寄った秀吉に出した「三献の茶」のエピソードだ。気が利くことが出世の鍵であると教えている

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江戸中期に書かれた逸話集「武将感状記」に出てくる。真偽はともかく、他人の心中を推し量る「忖度(そんたく)」は昔から美徳とされた。森友、加計(かけ)問題で負のイメージが付いたのは残念だが、日常用語になったのだから今年の流行語「年間大賞」は当然だろう

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もとは中国最古の詩集「詩経」にある漢語だ。人気ドラマで多用されたり、土産品の名前になったりと、なじみのない言葉が一気に広がったのはなぜか。職場内を察し有給休暇を言い出せなかったとか、上司の意向をくむのに苦労したとか、誰しも心当たりがあるからではないか

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似た言葉に空気・行間を読む、あうんの呼吸、以心伝心、斟酌(しんしゃく)などがある。言葉に出さずとも通じ合うことが日本社会では大切とされてきた。経済のサービス化で空気を読むことが一層迫られる時代になっている―。精神科医片田珠美さんの指摘である

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著書によると自身は忖度が苦手で、精神科医を志したのは察知の方法を科学的に学びたいとの思いもあった。“忖度疲れ”を避けるには、冷めた目で空気を読み、流されないこと、他人の意向が気にならないほど自分のやりたいことを突き詰めること。ゴーイング・マイウエーを勧めている。

(12月2日)

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