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松本市が「楽都」と呼ばれるようになってから久しい。小澤征爾さんが総監督を務める音楽祭の開催地であることが大きいけれど、音楽を愛好する市民も重要な役割を果たしている。「まつもと市民オペラ」もその一つだ

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2004年にまつもと市民芸術館が開館し、オペラを気軽に楽しんでほしい、と結成された。07年の初公演以来、「魔笛」や「カルメン」など、有名な作品を約2年ごとに披露してきた。演出や指揮、ソロ歌手はプロに依頼しているが、合唱団やオーケストラは地元市民らが担う

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手間暇かかる市民オペラが長年続いているのは、松本出身のバリトン歌手太田直樹さんの存在が大きい。ドイツでオペラと歌曲を学んだ後、東京を拠点に活動していた。故郷に恩返しがしたいと、市民オペラに関わった

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演目の選定のほか、有名な歌手を招いたり、自らも舞台に上がったりした。気さくな人柄で、まとめ役をこなした。今年の出し物は團伊玖磨さんの「ちゃんちき」。16、17日に芸術館で上演する。日本の作品に取り組むのは初めてで、市民オペラの幅が広がる、と期待されている

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その太田さんが舞台で歌う姿はもう見られない。闘病の末、今年8月に亡くなった。57歳だった。親交があった団員は「太田さんと一緒に舞台に立っているつもりで、今回の公演を成功させたい」と意気込む。本番に向け、練習は追い込みに入った。太田さんがまいた多くの種は、豊かな実を結ぶに違いない。

(12月4日)

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