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嫡出否認 民法改正へ国会で議論を

 離婚前や離婚後300日以内に生まれた子は、実際の父親が別でも、民法の「嫡出推定」により、前夫の子とされる。父子関係を否定する嫡出否認の訴えは前夫しか起こすことができない。

 妻や子に嫡出否認の訴えを認めないこの規定が、法の下の平等や男女平等を定めた憲法に反するかが争われた裁判で、神戸地裁が憲法違反には当たらないとする判決を出した。父親を確定して子の利益を保護する上で、規定には合理性があると述べている。

 嫡出推定にかかわる民法の規定は、戸籍がない人を生む要因になっている。戦前の旧民法から引き継いだ条文が、時代を経て招いている深刻な弊害である。その現状に正面から向き合い、司法の責任を果たしたとは言いがたい。

 原告の女性は30年ほど前、暴力を振るう夫と別居し、離婚成立前に別の男性との間に娘が生まれた。夫の子として戸籍に記載されるのを避けるため出生届を出さず、娘は無戸籍に。その後、娘が産んだ孫2人も無戸籍になった。

 離婚した夫が死亡し、娘と孫は昨年ようやく戸籍を得ている。嫡出否認の訴えを妻や子が起こすことができれば、無戸籍は避けられたと主張していた。

 判決は、妻や子からの訴えを認めたとしても、実の父親の認知が得られないなど、子の身分の安定を損なう恐れがあるとしている。それがなぜ、否認の訴えを前夫に限ることを合理的と判断する理由になるのか分からない。

 判決は一方で、補完的な制度によって、子が無戸籍になるのを防ぐ余地があることを指摘。実の父親の認知などを要件に、嫡出否認を妻にも認めることを、選択肢の一つと述べた。

 立法の問題として国会や政府に法改正の議論を促したと見るべきだろう。夫の暴力から保護する法整備の必要性にも言及。対策を欠けば、実際に妻が否認を訴えるのは困難だとしている。

 無戸籍の人は法務省が把握しているだけで全国に700人余。当事者の支援団体は実際には1万人を超すと推計する。大半は、嫡出推定を避け、出生届を出していないとみられる。妻や子に嫡出否認の訴えを認めれば、無戸籍の解消につながる人は多いという。

 法の見直しを長く怠ってきた国会、政府の責任は重い。現に戸籍がない人の把握と救済を進めるとともに、無戸籍の人をさらに生まないため、嫡出推定の規定を含め、抜本的な法改正の検討を本格化させなくてはならない。

(12月4日)

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