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北極海の漁業 意義ある国際合意だ

 「歴史的な合意」と関係者がたたえるのも納得できる。

 日本を含む10の国や機関が、北極海中央部の公海での商業漁業を当面禁じることで大筋合意した。生態系を守れるよう着実な取り組みを期待する。

 対象となる海域は、ほぼ地中海の広さに相当する。将来の安定的な資源確保の上でも、禁止が必要との認識で各国が一致した。国際的な管理体制が整備されるまでの措置とし、当面16年間禁じる方針だ。文案を最終的に決める会合を来年2月に開く。

 米国やロシア、ノルウェーなど北極海沿岸5カ国は2015年7月、国際的な資源管理の枠組みができるまで商業漁業を控えることで合意していた。その後、漁業が盛んな日本や中国、欧州連合(EU)なども加わって協議してきた経緯がある。

 北極周辺は地球温暖化で氷の溶解が進む。12年には海氷面積が過去最少になった。科学者は50年ごろにも夏には海氷がほとんどなくなると予測する。漁場として利用できる海域が広がるとともに、より南に生息している魚が取れるようになる可能性もある。

 かつて南極海では有効な漁業規制がなく、乱獲による資源の激減が問題になった。いったん生態系を壊してしまえば回復させるのは容易でない。北極海中央部ではまだ漁業を行っている国がない。この段階で関係国が対策に乗り出す意義は大きい。

 北極海中央部の魚種や資源量は分かっておらず、今後調査する方針だ。資源の保護、管理につなげてもらいたい。

 漁業に限らず、豊富な海底資源や新航路の可能性からも北極圏への関心は高まっている。世界で発見されていない石油の1割、天然ガスの3割が眠るとされる。ロシア北部を通る「北極海航路」は従来のルートより、東アジア―欧州間の運航距離を縮める。

 権益を巡り、国同士の対立やあつれきが生じることは避けなければならない。南極については領有権の主張の凍結などを定めた条約があるものの、北極圏に包括的な取り決めはない。今回の合意は開発の在り方を巡る議論の必要性にも改めて目を向けさせる。

 日本政府は15年に定めた北極に関する基本政策で、国際ルールづくりに主導的役割を果たすと記した。安倍晋三首相は今年7月の北欧各国訪問で、北極圏の開発での連携強化などを確認している。権益確保にきゅうきゅうとするのでなく、環境重視の関与を求める。

(12月5日)

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