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〈戦争の最初の犠牲者は真実〉。無人機ドローンの軍事作戦を描いた英映画「アイ・イン・ザ・スカイ」は古代ギリシャの詩人アイスキュロスの言葉ともされる格言で始まる。攻撃をどう正当化するか。高官が腐心する場面が出てくる

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戦争には情報統制がつきものだ。76年前の12月8日。日本は米ハワイ真珠湾を奇襲した。大本営発表を受け翌9日付の新聞各紙には〈米の第一線主力を一挙血祭り〉などの見出しが躍った。これが10日後の19日付になると〈米太平洋艦隊は全滅せり〉だ

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華々しく誇示された戦果に国民は痛快感に浸っている。「これで胸がすっきりした。蛇の生殺しみたいな気持ちで煮え切らぬ会談を続けられるのは堪えられない。存亡の危局なのは承知だ。どんな苦労もしのびますよ」。当時の信濃毎日新聞に載っている松本市の商店主の言葉だ

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ニュースを配信していた「同盟通信社」は政府から機密費扱いで助成金を受け戦意高揚の宣伝を担う。初代社長は「ジャーナリズムの王道」を掲げつつ「国家及び公益を念とする公共機関」を目指した。国家の呪縛から逃れられなくなった要因でもある

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伝えるべき真実を伝えず大本営発表を垂れ流した。痛恨の思いで敗戦を迎えた新聞人はいる。「戦争に殺されまいとしたら絶えず戦争を見据えて対決し否定しなくては」。責任を感じ朝日新聞を辞めたむのたけじさんの言葉だ。真実の重みとともにかみしめたい太平洋戦争開戦の日である。

(12月8日)

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