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安保をただす 巡航ミサイル 専守防衛から逸脱する

 政府が長距離巡航ミサイルの導入に向けて2018年度予算案に調査費を計上する方向で調整している。

 他国のミサイル発射拠点などをたたく「敵基地攻撃能力」につながる装備である。専守防衛を旨とする自衛隊にはふさわしくない。

 米国が開発したミサイルの導入を目指すという。射程は900キロ以上とされる。航空自衛隊の戦闘機に搭載し、地上の目標や海上の艦船を狙えるようにする。搭載には機体の改修が必要とされ、具体的に調べたい考えだ。

 表向きは離島防衛の強化を目的としている。ふに落ちない説明である。どんな状況で、どう使うことを想定しているのか。不可欠の装備だというのなら、そのわけを分かりやすく示す必要がある。

 本当の狙いは、敵基地攻撃能力の保有に向けて布石を打つことではないのか。自民党は北朝鮮のミサイル開発を受け、保有を検討するよう政府に求めている。射程900キロ超のミサイルを持てば、北朝鮮に近づかなくても攻撃することが能力的には可能になる。

 政府の憲法解釈では、他に防ぐ手段がない場合に必要最小限度で基地をたたくことは「法理的には自衛の範囲に含まれ可能」とされている。それでも歴代政権は専守防衛の観点から、他国の基地を攻撃できる巡航ミサイルなどを保有してこなかった。

 専守防衛は、日本が攻撃されて他に手段がない場合に必要最小限度の実力を行使するという考え方だった。装備を最小限度にすることも含まれる。集団的自衛権の行使容認で既に変質している。敵基地攻撃能力も備えるとなれば、いよいよ名ばかりになる。

 日米安全保障条約の下、攻撃は米国が担い、日本は防衛に徹するのがこれまでの方針である。安倍晋三首相は国会で「今後とも日米間の役割分担を変更することは考えていない」との認識を示している。他国の領土を攻撃できる装備は本来、必要ないはずだ。

 自衛隊の装備増強が周辺国に対して脅威を与える可能性も見過ごせない。軍拡競争を助長するようだと、地域の安定を損なう。日本が新たな火種をつくることは避けなければならない。

 11月の日米首脳会談でトランプ大統領は米国製武器の購入拡大を日本に迫った。導入への動きが慌ただしく進みかねない。国会で政府の考えをただす必要がある。

(12月8日)

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