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イスラエル首都 独善が過ぎる米の転換

 どのような見通しがあっての判断なのか。

 トランプ米大統領がエルサレムをイスラエルの首都と認め、商都テルアビブに現在ある大使館を移転する、と発表した。

 米国を含む国際社会は、イスラエルとパレスチナによる「2国家共存」を中東和平への道としてきた。米政権の方針転換は、この目標を揺るがし、イスラム諸国の反米感情を高める恐れが強い。

 エルサレムの旧市街には、ユダヤ教とイスラム教の共通の聖地がある。イスラエルは1948年の第1次中東戦争で西エルサレムを獲得。67年の戦争で東エルサレムも占領し、全域を「永遠の首都」と主張するに至った。

 国家樹立を目指すパレスチナは、東エルサレムを将来の首都と位置付ける。国際社会は「エルサレムの地位は和平交渉で決めるべきだ」とし、イスラエルの主張を承認していない。

 聖地の帰属が関わり、歴代米政権は慎重に仲介に当たってきた。93年にはオスロ合意が成立し、パレスチナの自治が始まったものの、その後も武力衝突は続き、交渉は行き詰まっている。

 トランプ大統領は、交渉が進んでいないのに従来の手法を取るのは愚かだと言い、和平への「新たなアプローチ」を始めると宣言した。道筋は示していない。

 首都認定と大使館移転は、昨年の大統領選で訴えていた。就任後も、ユダヤ人の入植を支援した弁護士を駐イスラエル大使に指名するなど、親イスラエルの姿勢を隠そうとしない。一方、米国への入国を禁じたり、イランとの核合意の破棄を示唆したりと、反イスラムの態度はあらわだ。

 大統領は「中東和平の実現に全力を尽くす」とも述べた。片方に肩入れする人物を、仲介役として誰が信頼するだろう。

 イスラム諸国はむろん、米国の同盟国からも非難や懸念の声が相次いでいる。国連安全保障理事会は8日に緊急会合を開く。アラブ連盟、イスラム協力機構も臨時の会議を予定する。米政権に惑わされず、中東和平実現に向け、各国は連携に努めてほしい。

 大統領の判断の背景に、巨額の資金提供者の意向があったとされる。米国のシンクタンクは「強い指導者に見られたいという異常なほどの執着心」と分析する。

 そうでなくとも、パリ協定離脱、ユネスコ脱退と、独善的な外交が目に余る。大国であることにあぐらをかけば孤立を招く。トランプ大統領は肝に銘じるべきだ。

(12月8日)

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