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ネット配信 NHKの在り方論議を

 テレビ番組のネット同時配信を巡りNHKが迷走している。

 サービス開始に対する民放業界の反発を受け、課金を当面見送る考えを明らかにした。2019年開始の当初予定もぐらついている。

 原因は、公共放送の役割論議をさて置いて同時配信に走りだした姿勢にある。NHKは国民の知る権利に奉仕する基本に立ち返って、ネット時代の在り方を広く問い掛けるべきだ。

 そもそもの始まりは総務省が昨年秋、同時配信をNHKと民放に働き掛けたことにある。2020年東京五輪をにらみ放送サービスを多様化する狙いだった。

 ところがNHKが新事業に進出し受信料も徴収しようとしていることに民放が反発、総務省も慎重姿勢に転じた。今年7月、高市早苗総務相(当時)はネット配信について、「補完的な位置付け」にするよう求める書面を上田良一会長に送っている。NHKははしごを外された格好になった。

 同時配信を始めるには多額の投資が必要とされる。民放には負担になる。地方民放には、都市部のキー局の配信番組に視聴者を奪われる心配も大きい。

 NHKが設置した検討委員会は今年夏、同時配信に伴う受信料について、テレビを持たず新たにネット受信手続きをした世帯に受信契約を結ぶよう求めて課金する―との答申をまとめた。この答申も「収入増に走っている」といった批判を招いた。

 上田会長は共同通信のインタビューで「公共放送から公共メディアへの足場をつくっていくのが私にとって一番の課題」と述べている。NHKがネットなどメディア事業の本格展開を目指せば、放送法が定める業務範囲を逸脱するとの批判を招くだろう。「公共メディア」は本来、慎重な検討を必要とするテーマである。

 受信料の仕組みを合憲と判断した先日の最高裁判決も言うように、公共放送は国民の知る権利に奉仕するためにある。NHKの最も大事な仕事は公正な報道と優れた番組づくりを通じて国民、視聴者に奉仕することである。

 ネット利用の広がりで放送を取り巻く環境は変わりつつある。テレビを持たない世帯もさらに増えていくだろう。

 国民、視聴者にどうやって優れた放送サービスを今後提供していくか。公共放送の業務内容と組織はどうあるべきか。番組のネット配信は、そうした問題と一緒に議論する姿勢が欠かせない。

(12月25日)

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