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米の大型減税 財源見通しが甘すぎる

 先行きが心配になる政策決定である。

 米国で税制改革法案が成立した。2018年から10年間で総額1兆5千億ドル(約170兆円)程度の大型減税になる。法人税率を現在の35%から21%に引き下げることが柱だ。

 地方などと合わせた実効税率は日本やフランス、ドイツよりも低くなる。海外から米国への投資に弾みがつく可能性がある。税制の抜本改革はレーガン政権だった1986年以来、約30年ぶりだ。

 大型減税は政権の経済政策の看板だった。トランプ大統領は「米国史上最大の減税」とし、「海外に流出した企業と雇用を取り戻す」と訴えている。

 一定の効果は期待できるとしても副作用が見過ごせない。最大の問題は、財源が十分に確保されていないことだ。

 ムニューシン財務長官は「財源は成長による税収増で賄う」と繰り返すのみだ。議会超党派の税制合同委員会は、税収増を考慮しても10年間で財政赤字は約1兆ドル増えると予想している。

 政府の債務残高は既に約20兆ドルと巨額である。レーガン政権は税収減に伴う財政赤字と、ドル高による貿易赤字の拡大という「双子の赤字」に苦しんだ。その二の舞いになりかねない。

 個人課税では、所得税の最高税率が引き下げされた一方、最低税率は据え置かれた。企業と富裕層が優遇され、格差拡大が心配だ。

 景気の過熱も懸念される。

 7〜9月期の実質国内総生産(GDP)の確定値は年率換算で前期比3・2%増になり、2四半期連続で3%台に達した。

 減税で後押しする景気状況ではない。これ以上、過熱するとバブルが発生する可能性もある。

 米国の中央銀行に当たる連邦準備制度理事会(FRB)は今月、主要政策金利を0・25%引き上げることを決めている。来年2月に就任するパウエル次期FRB議長は、より機動的な金融政策をとらなければならない。

 他国への影響も大きい。

 金利上昇で米国への投資の魅力が高まれば、新興国から資金が引き上げられ、成長が鈍化する恐れもある。新興国の落ち込みは世界的な景気低迷を招き、米国経済も影響を受ける。

 各国間の法人税引き下げ競争を激化させる懸念もある。際限なき競争は各国の財政を悪化させ、最終的には個人の納税者が減少分を負担することになる。各国は慎重に経済動向を見守り、国際協調で歯止めをかける必要がある。

(12月26日)

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