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県産シードルに海外の目 英ジャーナリスト報告書

飯綱町で地元産シードルを手にするブラッドショーさん=5月飯綱町で地元産シードルを手にするブラッドショーさん=5月
 世界各国でリンゴの発泡性果実酒「シードル」を取材している英国の写真家で、シードルジャーナリストのビル・ブラッドショーさん(42)が、県内のシードル産地を取材した報告書をまとめた。品質管理の良さや異業種連携を評価しつつ、リンゴの品種や醸造方法については、もっと多様性が必要―とさらなる探究を提言している。

 県内産地の取材は、飯田市のNPO法人国際りんご・シードル振興会(後藤高一理事長会長)が依頼。ブラッドショーさんらがまとめた専門書「世界のシードル図鑑」の日本語版翻訳を監修した縁があり、産地の文化ごと観光客に楽しんでもらう「シードルツーリズム」の可能性を県内で探ってほしいと要望した。

 ブラッドショーさんは、5月中旬に来日。小諸市のリンゴ園や、上水内郡飯綱町や東御市、伊那市、下伊那郡松川町の醸造所などを1週間かけて取材した。飯田市内で振興会が初開催した国内最大規模のシードル試飲会「ナガノシードルコレクション」に集まった県内産49銘柄も飲み比べた。

 報告書でブラッドショーさんは、県内のリンゴ栽培が産業として確立し、暮らしや文化にまで溶け込んでいると評価。シードル醸造については「完璧な品質管理。誠実さがあり、しかもハイレベル」とし、「世界から見ても類いまれな好スタートを切っている」と分析した。

 一方、日本のリンゴ栽培がフジなど生食用を中心に発展してきた歴史から、醸造用の品種が少ないことも指摘。渋味の元になるタンニンを多く含む品種や、酸味の強い品種のブレンドが、「酒質に『骨格』や『奥行き』を与える」とし、ウメやユズ、柿の皮といった日本らしい果実をフレーバー(風味)として加えることの研究もさらに進めるべきだ―とした。

 県内では、シードルの醸造を手掛けるワイナリーや日本酒の蔵元などが増加傾向。小規模生産ならでは銘柄の多さが魅力だが、国際的な催しを開いたり、新品種や醸造法を研究したりするためには大手メーカーとの連携も有効と指摘。フランス語に倣った「シードル」という呼び方は、甘いフレンチスタイルを連想させるため、海外展開には、英語の「サイダー」の方が向いているとした。

 国際りんご・シードル振興会は、ブラッドショーさんの提言などを紹介する報告会を12月上旬に飯田市内で開催。発表に当たった同振興会理事の矢沢愛子さん(35)は「産地として発展していく過程そのものに愛好家を引きつける面白さがあり、必ずしも完成されてなくていいというのがビルさんの考え。リンゴにまつわる足元の文化を掘り起こしながら、魅力を発信していきたい」と話している。

(12月28日)

長野県のニュース(12月28日)