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読字障害の教材 中東へ シナノケンシ、エジプトで普及目指す

音声の再生と同時に読み上げ部分を目立つ色で表示する教材の画面。教材製作ソフトをエジプトで展開する音声の再生と同時に読み上げ部分を目立つ色で表示する教材の画面。教材製作ソフトをエジプトで展開する
 精密モーター製造などのシナノケンシ(上田市)は、読み書きがうまくできない読字(学習)障害がある人向けの教材を製作する自社開発ソフトについて、エジプトでの普及に乗り出す。識字率の低さが課題となっているエジプトを足掛かりに、中東地域の他のアラビア語圏への展開を想定。識字率の改善にも期待する。2014年に商品化したソフトで、海外市場への投入は初めて。

 同社は1998年、視覚障害者のため、デジタル録音図書の国際標準規格「DAISY(デイジー)」に対応したCDの音声再生機の開発・販売を始め、障害者向けの機器開発で実績を積んできた。音声の読み上げと同時に読み上げ部分を画面上に表示できる「マルチメディアデイジー」と呼ばれる規格に対応した教材の製作ソフトや再生ソフトも開発し、福祉・生活支援機器事業の幅を広げてきた。

 こうした実績に、エジプトで活動する日本のNGO(非政府組織)関係者が着目。同国で対応が不十分な読字障害にシナノケンシの製品や技術が有効ではないかと打診があった。同国は読み書きができない「非識字者」の割合が4人に1人程度に上るとされ、シナノケンシはマルチメディアデイジーの普及で「音声と文字と両方での学習機会を提供できる」と考えた。

 手始めに、エジプト第2の都市アレクサンドリアにある国立図書館に同社の教材製作ソフト「プレクストークプロデューサー」とパソコンを4セット納入。同社福祉・生活支援機器ビジネスユニットの担当者2人が来年1月に渡航し、教材製作のノウハウを持たない図書館のスタッフや支援団体らへの研修を行う。現地の読字障害や非識字者が抱える課題の把握も目的だ。

 教材製作ソフトの普及事業については、民間技術を生かした開発途上国の社会・経済開発援助としてJICA(国際協力機構)が支援を決定。機器納入や渡航費を最大2千万円まで負担する。

 シナノケンシは来夏に現地関係者を日本に招き、教材を導入している特別支援学級などを視察してもらう。秋をめどにアレクサンドリアの国立図書館で教材製作の試験運用を始め、技術や教材の利点を政府関係者や現地の販売代理店にアピールする計画だ。

 エジプトには障害のある子どもとない子どもが共に学ぶ「インクルーシブ(包み込み)」教育を目指す公立の小中学校が全土に約2千校あるという。シナノケンシはこうした小中学校への普及を狙う。同社の広報担当者は「これまで培った障害者支援の技術やノウハウが、エジプトを起点にアラブ諸国へ広がり、ビジネスとしても成り立つようにしたい」としている。

(12月28日)

長野県のニュース(12月28日)