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柏崎刈羽原発 東電への不信置き去りに

 福島の原発事故はいまだ原因さえ解明されず、廃炉のめども立っていない。東京電力に原発を動かす資格はあるのか―。疑念と不信を置き去りにした納得しがたい判断だ。

 新潟の柏崎刈羽原発6、7号機が再稼働に向けた原子力規制委員会の審査に合格した。事故後、東電の原発が審査を通るのは初。事故を起こしたのと同じ沸騰水型の原子炉としても初めてである。

 問われたのは、設備が新規制基準に適合しているかだけではない。東電の事業者としての適格性がもう一つの焦点だった。規制委は7月、東電の経営陣から意見を聴く異例の対応をしている。

 田中俊一委員長(当時)は、福島原発の廃炉の取り組みを踏まえ「主体性のない事業者に再稼働の資格はない」と発言していた。ところが、厳しい姿勢はほどなく一転する。廃炉をやり遂げるとする東電の「決意文」を受け入れる形で適格性を容認した。

 決意さえ示せば適格と言えるのか。規制委の判断は根拠に乏しい。東電の隠蔽(いんぺい)体質は根深く、安全への意識の薄さも目につく。

 柏崎刈羽では今年、事故時に対応拠点となる免震重要棟の耐震性不足を3年も規制委に報告していなかったことが発覚した。そもそも福島の事故は、巨大津波の恐れが指摘されながら対策を怠ったことで深刻な事態を招いた。

 東電と政府は再稼働を経営再建の柱と位置づけてきた。廃炉や賠償の費用が想定より膨らむ一方、停止した原発は維持費がかさみ経営を圧迫する。再稼働しなければ国民の負担増につながるという。脅しともとれる言い分である。

 再稼働を当然の前提とするのは間違いだ。経営を優先して安全を軽視することがあってはならない。原発はひとたび事故が起きれば、取り返しのつかない被害を生む。福島の教訓に向き合い、再稼働に頼らない道を探るべきだ。

 実際に再稼働するには立地自治体の同意が要る。新潟県の米山隆一知事は、福島の事故を県として検証するのに3〜4年はかかるとし、それまでは再稼働を認めない姿勢を崩していない。原発を不安視する県民の意向を踏まえた妥当な判断である。

 なぜ事故は起きたのか。避難など対応のどこに問題があったか。自治体がすべきことは何か。丁寧な検証を重ねる必要がある。東電の体質が改まるのかも見極めなければならない。結論を急がず、住民にも投げかけて意見を聴き、慎重に判断してほしい。

(12月28日)

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