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所有者不明地 省庁横断の取り組みで

 持ち主が分からない土地を活用しやすくするための新法案の骨子を国土交通省がまとめた。来年の通常国会に提出し、2019年度の施行を目指す。

 所有者不明の空き地に5年以上の利用権を設定し、公益性のある事業に使えるようにする。国や自治体が土地を取得する手続きを簡単にする。こんな内容が柱だ。

 憲法が保障する財産権に関わる。相続や登記を所管する法務省、農地や林地の農林水産省を横断した検討を求める。

 増田寛也元総務相ら民間有識者でつくる研究会が、所有者不明土地の推定面積や経済損失を発表している。昨年時点で九州を上回る約410万ヘクタールあり、年間の損失は約1800億円に上る。対策を取らなければ、40年には北海道の約9割の720万ヘクタール、損失は約3100億円に膨らむとしている。

 不明土地は、所有者が亡くなった後、引き継ぐ人がいなかったり、所有権を移す登記がされなかったりして発生する。

 道路や河川整備などの公共事業を行う際の支障になるほか、管理が行き届かずごみの不法投棄や景観の悪化にもつながっている。自治体にとっては固定資産税が徴収できない問題もある。

 新制度では市町村や企業、NPOなどが申請し、都道府県知事が公益性を判断して利用権を設定する。公園や農産物直売所、イベント広場などが想定される。

 ただ、所有者が現れた場合、設定期間が終わった後に原状回復して返さなければならない。利用が不安定で長期のまちづくり計画が立てにくい難点もある。

 公共事業用地としての土地取得では、所有者を捜す調査の対象を親族のみとし、近隣住民などは除外する。それで見つからなかった場合は、国や自治体に所有権を移転するのに必要な都道府県収用委員会の審理を省き、知事の判断で公有化できるようにする。

 迅速に土地利用が進められるメリットはある。だが、所有者捜しに手を尽くさず公平な第三者の目も通さないとなると、恣意(しい)的な土地取得が行われかねない。慎重さが必要だ。

 民間研究会の推計では、土地の種類別で所有者不明の割合が最も高いのは林地で、25・7%を占める。県土の8割が森林の長野県では、間伐などの森林整備が進まない一因になっている。

 法案骨子からはその対策が見えない。縦割りを排し、登記のあり方を含め権利保護と利活用の調整にさらに知恵を絞りたい。

(12月29日)

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