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GPS捜査 まだ使っていたとは

 令状を取らずにGPS(衛星利用測位システム)端末を取り付ける捜査は違法―。最高裁は3月の判決で明確な判断を示している。それを踏まえ、警察庁はGPSの使用を事実上禁止する通達を出していた。

 にもかかわらず、GPS端末を使った捜査がその後も行われていた。個人の判断だったというが、見過ごすことはできない。

 三重県警の警部補が自動車窃盗事件の捜査で、容疑者の車に取り付けた。違法だと認識していたという。容疑者側が気づいて取り外し、別の事件で逮捕された際に申し出て発覚した。県警は、警部補がほかの捜査でも使った可能性があるとみて調べている。

 三重県警は、組織としては把握していなかったと説明している。本当に一人の判断だったのか。組織の関与はないとしても、半ば知りつつ許容する空気が捜査現場になかったのか。詳しく調査し、結果を明らかにすべきだ。

 表に出ていないだけで、ほかの警察でも使われていないか心配になる。使用禁止を各地の警察にあらためて徹底する必要がある。

 警察はGPSによる捜査を令状の要らない任意捜査と位置づけ、10年以上前から活用してきた。端末をひそかに車などに取り付ければ、捜査対象者の居場所を常に把握し、行動を追跡できる。

 秘密保持も徹底した。警察庁が2006年に出した通達は、GPSを使ったことを容疑者の取り調べで明かさず、捜査書類にも記載しないよう求めていた。

 いわば“裏の捜査手法”となってきたGPSの使用に、正面から待ったをかけたのが最高裁の判決だ。個人の行動を網羅的、継続的に把握可能なGPS捜査は、「私的領域に侵入されない権利」を侵害すると認定した。

 GPSで取得した位置情報は容易に蓄積、保管できる。分析して交友関係や思想・信条をうかがい知ることも可能だ。知らぬ間に、事件捜査とは別の情報収集などに利用される危険性も伴う。

 憲法35条は、令状がなければ住居の捜索や所持品の押収を認めていない。最高裁はこの規定を根拠に、令状がないGPS捜査を違法と断じ、令状による場合も新たな立法の必要性を指摘した。

 隠しカメラや盗聴器を含め、監視技術は高度化している。公権力による利用を安易に許せば、プライバシーは侵され、憲法による人権保障の土台が揺らぐ。警察権限の乱用、逸脱がないか。厳しい目を向けていく必要がある。

(12月29日)

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