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国や自治体の予算編成でよく聞く言葉に「芽出し」がある。事業を始める前に調査費などとして少額計上し、地ならしをする。反対の出そうな事業では既成事実化の露払いにすることも。次世代原子炉「高温ガス炉」もその一つだろう

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国の来年度予算案で研究開発に約15億円が盛られている。高温ガス炉は水の代わりにヘリウムガスを冷却に使う小型原子炉だ。電源喪失となっても自然に停止するため炉心溶融や爆発が起こりにくく、安全性が高いとされる。内陸での建設も可能という

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90年代に日本原子力研究開発機構が研究炉を造り、高温エネルギーの抽出に成功したが、福島事故で中止になった。その後も逆風下で根を伸ばし続けた。原発依存度を低減させるとした政府のエネルギー基本計画や成長戦略でも、いつの間にか「推進」のお墨付きをもらっている

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来年はポーランドで芽が伸びそうだ。発電量の大半を石炭に頼り、温室効果ガス削減を進めるEU内での立場は厳しい。そこで高温ガス炉導入を計画、日本が協力を約束した。ポーランドに技術を持ち込んで共同開発を進め、輸出につなげる構想という

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原子力機構と民間企業が担う。国内が駄目なら海外で、高速増殖炉「もんじゅ」が駄目なら高温ガス炉で―。「原子力村」の根っこはしぶとい。再び“夢のエネルギー神話”が語られる。それでも行き場のない「核のごみ」を出す原子炉であることに変わりない。芽出しの行方に要注意だ。

(12月30日)

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