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森友・加計問題 「政と官」不信残したまま

 大阪市の森友学園と岡山市の加計学園、二つの学校法人を巡る問題は今年の国会論戦の大きな焦点だった。

 公平、公正であるべき行政がゆがめられたのではないか―。野党が繰り返し追及したものの、政府側との質疑はかみ合わなかった。疑問は来年に持ち越される。

 国有地払い下げ、大学獣医学部新設という決定が不透明な形でなされた。うやむやにできない問題である。事実関係をはっきりさせることは年明けの通常国会で与野党に課された宿題だ。

   <不可解な特別扱い>

 森友学園には小学校建設用地として評価額9億5千万円の国有地が1億3千万円で売却された。地下に埋まっているごみの処理費用を差し引いたという。経緯を調べた会計検査院は、ずさんに算定されたと指摘している。

 国会審議で財務省は、価格交渉を疑わせる音声データの存在を認めた。森友側が「ゼロ円に極めて近い形で払い下げてほしい」と求め、財務省側はごみ撤去費として既に支払った1億3千万円を下回る金額は提示できないと回答―といった内容のものだ。

 異例の対応を重ねたことも判明している。売却を前提にした定期借地契約を結んだり分割払いを認めたりしていた。近年、他に例はない。不可解な特別扱いだ。

 加計学園は政府の国家戦略特区制度を活用し、愛媛県今治市に岡山理科大の獣医学部を設ける。1966年の北里大以来、52年ぶりの新設である。定員140人と全国最大の規模になる。

 政府は、獣医学部の新設を認める条件として▽新たに対応すべき具体的な需要▽近年の獣医師の需要動向を考慮―など4項目を閣議決定している。これらを満たしているとするものの、明確な根拠は示していない。

   <人事権を握る官邸>

 森友の小学校は安倍晋三首相の妻、昭恵氏が一時、名誉校長に就いていた。加計の理事長は首相の長年の友人が務める。こうした関わり、近しさが疑念を生んだのは当然の成り行きだ。

 国有地売却では、首相夫人付の政府職員が財務省の担当者に問い合わせをしていた。

 獣医学部を巡り、文科省が内閣府とのやりとりを記録した文書には「総理のご意向」「官邸の最高レベルが言っている」といった文言があった。文科省の前事務次官は国会で「首相補佐官がさまざまな動きをしていた」と述べ、官邸の関与を指摘している。

 問題は、首相側から省庁に対して指示や働き掛けがあったかどうかだけにとどまらない。

 2014年に内閣人事局が発足し、各省庁の幹部人事は首相官邸が一元管理している。官邸の意向を推し量って仕事をする傾向が強まっているのではないか。いわゆる「忖度(そんたく)」である。

 野党の追及に、政府側は「記録がない」「記憶がない」といった答弁を繰り返し、議論は堂々巡りだった。根拠を示さないまま、適切だったと主張しても、説得力を持たない。

 世論調査では政府の説明に対して「不十分」「納得できない」との回答が多数を占めている。

 行政をチェックする国会は機能不全が著しい。

 決定が適正だったのか判断するには、どんな交渉や議論を経たのか詳しく知る必要がある。記録がないなら関係者を呼んで事情を聴くのが筋だ。与党は、野党が求める参考人招致や証人喚問に応じるべきである。

 首相の国会軽視の姿勢も見過ごせない。憲法に基づく臨時国会召集の要求を放置した揚げ句、冒頭解散に踏み切った。安全保障関連法の成立を強行した15年にも応じなかった経緯がある。

   <徹底解明が前提だ>

 衆院選後の特別国会では自民党が質疑時間の配分見直しを主張した。2対8で野党に多く配分する近年の慣例を改め、与党分を増やそうというものだ。巨大与党のおごりを感じさせる提案である。

 首相は、国有地売却について算定のずさんさを指摘した会計検査院の報告を真摯(しんし)に受け止めるとしつつ、売買契約の検証や再調査は拒否した。獣医学部新設の認可を巡っては適正だったとの認識を重ねて強調している。

 一方で、国有財産の処分手続きを見直す考えを示し、国家戦略特区制度の透明性を向上させるとした。政府は行政文書管理のガイドラインも見直している。

 再発を防ぐことは、むろん大事だ。とはいえ、論点を今後の取り組みに移し、幕引きとするわけにはいかない。

 政と官の関係がゆがんだものになっていないか、1強のひずみが生じてはいないか。問題の根っこを掘り下げる必要がある。

 同じことを再び起こさないためにも、まずは決定に至った過程の解明が欠かせない。政府を監視する国会の存在意義に関わる。与野党を問わず国民の代表として責任を果たさなくてはならない。

(12月31日)

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