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愛犬の姿をもう一度 「ぬいぐるみ犬毛犬」人気

愛情を込めて丁寧に人形を仕上げていく酒井さん愛情を込めて丁寧に人形を仕上げていく酒井さん
 愛犬の死による飼い主の心の傷を癒やしたい―。飯田市松尾町の酒井啓子さん(64)が作り続けている、犬の毛を使って元気だった頃の姿に仕上げる「ぬいぐるみ犬毛犬(いぬげいぬ)」が、全国各地の愛犬家たちの人気を集めている。家族として一緒に暮らしてきた自身の愛犬が15年ほど前に病気で死んだ際、毛を使って何か形を残したいと考えたのがきっかけ。長年の作業で手首に痛みもあるが、思いを込めてぬいぐるみを作り続ける。

 ぬいぐるみは体長25センチ、高さ15センチほどの大きさ。ブラッシングの時に抜ける柔らかい下毛を、下毛や羊毛で作った芯に針で繰り返し刺し、固めながら形を整えていく。鼻が長すぎる、足が太い…。酒井さんは、購入者から毛と一緒に送られてきた犬の写真とにらめっこしながら毛を取り付けたり、外したり。「最後に犬(のぬいぐるみ)がにっこりと笑うの。それがお家に帰っていいよという合図」とほほ笑む。

 鼻の穴の中にがんが見つかった愛犬の「ショパン」は、病の進行に連れて顔がゆがみ、呼吸ができないほどまでに苦しんだ。一日でも長く生きてほしいけれど、苦しむ姿はあまりにもつらかった。酒井さんは安楽死を選択。病院から帰宅し、涙が止まらなかった。

 自宅には、生前、ショパンをブラッシングした時に抜けたふわふわの毛が大量に残っていた。知人に頼んで毛糸にしてもらい、マフラーを編んだ。しかし、作業の途中で首に当ててみると、柔らかかったはずの毛がちくちくとし、マフラーとしては使えないと分かった。それでも何とか愛犬の毛を形にして残したいと、ぬいぐるみ作りを発案。最初は生前の姿に似せるのが難しかったが、試行錯誤を重ねて改良していった。

 通っていたパソコン教室で作ったホームページに作品の写真を掲載したところ、見た人から「作ってほしい」との話があり、10年ほど前に「工房犬毛犬」を発足させた。これまで作ったのは、トイプードルやマルチーズ、パグなど30種類、150体ほど。徐々に人気が広まり、全国各地から注文が寄せられるようになった。

 購入者は主に、失った愛犬にもう一度会いたいと願う人たち。ぬいぐるみを送ると、「(愛犬が)笑顔で帰ってきたのを見て、涙があふれました」「(愛犬が死んだ時は)自分の体の一部がもぎ取られたような思いだったが、酒井さんのおかげでまた頑張れます」といったメッセージが届く。何度も針を刺したり抜いたりする作業でけんしょう炎を患い、やめようかと考えたこともあったが、購入者たちの励ましにやりがいを感じている。

 注文を受ける際は、愛犬の性格やエピソードなども書いてもらう。「愛犬との思い出を書き出すことで悲しみも和らいでくる」という。

 現在も30体ほどの注文を受け、製作に取り組む日々。作業が追い付かないため今は新規受け付けを停止しているが、近く再開する。価格は1体12万円ほどという。

(1月1日)

長野県のニュース(1月1日)