長野県のニュース

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東京・上野の西郷隆盛像に寄り添うのは、ふるさと鹿児島産の薩摩犬だ。無類の愛犬家だったという。明治政府内の対立で下野して帰郷した西郷は犬を連れてウサギ狩りに明け暮れた。最後の戦いになった西南戦争も犬を伴い出陣した

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今年で150年になる明治維新。変革は犬たちにも及んだ。府県が飼い主不明の犬を即処分する「畜犬規則」を定める。開国前は飼い主がおらず子どもの遊び相手などの褒美に地域の人々に餌をもらっていた。そんな自由気ままな「里犬」は姿を消した

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犬と人の関係の「欧米化」を図った、と仁科邦男著「犬たちの明治維新」は分析する。その欧米もかつては放し飼いが主流だった。犬の立場は人の世につれて変わってきた。今は「家族の一員」である。だが長い付き合いのわりには心理や行動について人の思い違いが多いらしい

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歯向かう犬は飼い主を支配しようとしている―。祖先のオオカミに重ねる見方が幅を利かせてきた。研究が進む動物行動学によれば「不安に駆られての行動」。英国の研究者ジョン・ブラッドショーさんの著書で知った。正しい理解が犬のためにもなる

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日本の飼育数は減り続け昨年は892万匹と初めて猫を下回った(ペットフード協会)。日中留守にするには飼いにくい。飼育放棄による処分も絶えない。鹿児島の犬は太平洋戦争で毛皮用に根こそぎ供出された。身勝手さを悔い平和な世を祈りつつ幸福な関係を考え直したい一年である。

(1月1日)

長野県のニュース(1月1日)