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穏やかな元日、松本市の中心街にある四柱神社に詣でると、参拝の列が境内から商店街まで延びている。辺りは甘酒やたい焼きの香りが漂い、順番を待つのも楽しくなる。お札やお守りの授与所も大にぎわい。懐かしい初音笛(はつねぶえ)もあった

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今では珍しい縁起物の小さな竹笛だ。前後の穴を指でふさいで吹くとウグイスのような音が出る。かつては長野市の善光寺周辺でも、大みそかの夜から元旦にかけて「はーつねー」の売り声が響いた。松本市内の神社は「招福初音」として授与している

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福島県会津地方では、七転び八起きの「起き上がり小法師(こぼし)」、商売繁盛の「風車」とともに「会津三縁起」と呼ばれ、伝統民芸品になっている。神棚に供えた後、子どものおもちゃにしたという。冬の長い地方では春を告げるウグイスの音色がとりわけありがたく思えるのだろう

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「角川俳句大歳時記」には「初音売(うり)」「初音笛」が新年の季語として収録されている。竹の香の青き初音を買ひにけり(栗生純夫)歳月のくらき坂より初音売(宮坂静生)…。初音への思いの深さゆえか、例句のほとんどが信州人の作というのも面白い

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招福初音は500円。地元で理髪店を営む原幸雄さんが30年ほど前から父の後を継いで作り続ける。懐かしさにファンも多いという。指をずらしながら吹いているとウグイスらしく聞こえてきた。「ホー、ホケキョ」。ことしは平穏でありますように―。続いてほしい素朴な縁起物である。

(1月3日)

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