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戌(いぬ)年生まれは、律義で苦労を惜しまない人が多いという。藤田寛さんはまさにその一人だろう。来月で48歳。神奈川県での勤めの傍ら、小海町へ毎週通っている。農家から提供してもらったコメや野菜を困窮者の支援団体に送るためだ

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新年も早々に小海へ入り、きのうが“仕事始め”。夜半から雪が積もったので、農家へ芋や白菜を取りに行く予定を変え、寄せられた未使用のはがきを整理した。切手に交換し送料に充てている。主宰する「山谷(やま)農場」はことし、設立から20年目になる

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日雇いの労働者たちが集まる東京・山谷(さんや)地区の失業者や路上生活者に届けたのが始まりだった。その後、難民、外国籍の母子世帯、薬物やアルコール依存の当事者が共同生活する施設へと広がり、支援先は首都圏や北海道などの11団体に増えた。送るコメは年間およそ12トンに上る

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昨年は、シングルマザーを支援する大阪の団体が送り先に加わった。三度の食事にさえ事欠く母子が“自己責任論”におびえ、周囲に助けを求められずにいる現実がある。コメを届けても根本的な解決にならないかもしれない。でも放ってはおけない―

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信仰半分、意地半分。戦後間もない時期に私財を投じて児童養護施設を開設した澤田美喜さんの口癖だったという言葉を、同じクリスチャンとして励みにしてきた。若くはない年齢になり、疲れもあるけれど、まだしばらくは小海に通うつもりだ。やはり、苦労を惜しまぬ戌年の人である。

(1月4日)

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