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日中条約40年 関係改善へ弾みにしたい

 「日中平和友好条約に調印 発展へ新たな決意」。1978(昭和53)年8月13日付の本紙朝刊1面は、日中条約の関連記事で埋め尽くされている。

 今夏でちょうど40年になる。当時の高揚感は失われ、日中関係は先を見通しにくい状況が続いている。中国の習近平国家主席は、暮れに訪中した自民、公明両党幹事長からの今年の訪日要請に対して具体的な返答を避けた。

 日中の協力は双方の利益だけでなく、東アジアの平和と安定にも欠かせない。節目の年を関係改善に弾みを付ける機会にしたい。

   <世界に影響力強め>

 この40年の変化は大きい。中国の国内総生産(GDP)は2010年に日本を抜き、今や米国に次ぐ世界2位の経済大国だ。

 現代版のシルクロード経済圏の構想「一帯一路」を掲げ、国際社会での影響力拡大を狙う。中国から中央アジア、欧州に続く「シルクロード経済ベルト」(一帯)と東南アジアやインドを経由して欧州へと続く「21世紀の海上シルクロード」(一路)から成る。

 沿線国の人口は世界の約6割を占める。構想を支えるため「シルクロード基金」を設け、アジアインフラ投資銀行(AIIB)の設立も主導した。一帯一路をテーマに国際会議を開き、世界経済のけん引役への意欲を示している。

 昨年10月の中国共産党大会では習氏の名前を冠した指導思想が党規約に盛り込まれた。権力基盤を盤石にした習氏は今世紀半ばまでに米国と肩を並べる超大国になることを目指している。

 北京で11月に行ったトランプ米大統領との会談では「太平洋には中国と米国を受け入れる十分な空間がある」と改めて表明した。西太平洋への海洋権益拡張の意欲を隠そうとしない。

   <尖閣巡り続く対立>

 中国が自信を深めている様子は中央軍事委員会拡大会議での習氏の発言にも見て取れる。昨年2月に開かれた会議だ。

 国際情勢について「新旧の秩序の交代期」との認識を示し、「われわれはグローバルな統治体系づくりのメインテーブルに着き、大きな影響力を勝ち取り、統治体系の変革をリードする有利な条件が整った」と国力を誇示した。

 急速に成長、発展した中国のグローバリズムに、日本はどう向き合っていくか。歴史認識を巡る対立などもあり、なかなか信頼関係を醸成できない。中国のトップによる2国間会談のための来日は08年以来、途絶えている。

 沖縄県・尖閣諸島を巡る緊張状態も続く。同じ会議で習氏は「わが軍は海、空からのパトロールの常態化を一層強化し、東シナ海と釣魚島(尖閣の中国名)の権益を守る軍事行動を深く推進した」と述べるとともに、領土主権と海洋権益を断固守る考えを示した。

 12年に日本政府が尖閣を国有化して以降、中国側の活動が続いている。13年11月、東シナ海上空に防空識別圏を設定した。16年には中国海軍艦が尖閣周辺の接続水域に入ったほか、空母が東シナ海から沖縄本島と宮古島の間を通って太平洋へ航行している。

 偶発的な衝突を防ぐため防衛当局間の「海空連絡メカニズム」の協議を急ぐとともに、首脳同士をはじめ対話を重ねる環境を整えていかなくてはならない。

 安倍晋三首相は昨年11月、訪問先の東南アジアで習氏、李克強首相と相次いで会談した。両国関係の改善推進で一致し、日本が議長国を務める日中韓首脳会談の早期開催にも合意している。

 日中韓の会談は15年にソウルで開かれて以来、延び延びになってきた。政府は今春開催を目指して調整を進める。その後、首相の訪中と習氏の訪日を年内に実現したい考えだ。首脳の相互往来に道筋が付くことを期待する。

   <対米一辺倒でなく>

 政府の対中政策には変化が出ている。首相は自身が掲げる「自由で開かれたインド太平洋戦略」を中国の「一帯一路」と連携させる形で推進する意向だ。中国をけん制する目的を転じ、新たな協力の足掛かりにする。

 首相はこれまで「地球儀を俯瞰(ふかん)する外交」を唱え、積極的に外遊を重ねてきた。内実は日米関係の強化、対中けん制が柱だ。日米を基軸としつつ、中国を含めた多角的な外交の強化が求められる。日中関係改善に向け、軌道修正しようというのなら歓迎できる。

 米国製の武器購入が拡大し、米軍と自衛隊の一体化が加速している。日本の防衛力強化は、中国の軍備増強の口実に使われる可能性もある。力と力で張り合えば、地域の緊張を高めかねない。この点でも米国一辺倒は危うい。

 首相は第1次政権の06年、北京で首脳会談に臨み、国際的課題で日中の共通利益を追求する「戦略的互恵関係」を打ち出した。

 習氏との会談でも示した「戦略的互恵関係」は何をどう進めるのか、協力を具体化するときだ。40周年を新たな出発点にしたい。安倍外交が問われる1年になる。

(1月4日)

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