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イラン抗議デモ 強権で抑えつけるな

 親米独裁の王制を倒した革命から40年近くを経て、イランのイスラム体制は大きな曲がり角に差しかかっているのではないか。民衆が公然と体制に抗議するデモが全土に広がった。

 若者を中心に、自然発生的にわき起こった体制批判の声は、底流に渦巻く人々の不満やいら立ちを映し出している。強権で抑えつけても解決にはならない。

 北東部の地方都市で昨年末に起きたデモが、年をまたいで首都テヘランを含む40以上の都市に波及した。治安部隊との衝突で20人以上の死者が出ている。拘束された市民は900人を超えた。

 独裁者に死を―。最高指導者のハメネイ師を糾弾するスローガンが街頭にこだました。体制への異論が弾圧されてきたこの国で、目にしたことのない光景である。

 背景にあるのは、上向かない経済状況だ。ロウハニ政権は2015年、核開発の制限を受け入れる合意を米欧など6カ国と締結。制裁で疲弊した経済の再建を図ったが、米国でトランプ政権が発足して行きづまった。

 イランを敵視するトランプ大統領は核合意を「最悪」と非難。合意の行方には暗雲が垂れ込める。外資を呼び込んでの開発は滞り、物価が上がって人々の暮らしは厳しさを増した。若年層の失業率は30%近くに達している。

 混乱の発端は、穏健派のロウハニ政権と対立する保守強硬派が関与した反政府デモだったようだ。ところが、革命体制そのものへの抗議がうねりとなって政府批判をのみ込んだ格好である。

 インターネット上の呼びかけで拡散したデモは、特定の個人や団体が主導しているわけではない。統一的な要求もない。それだけに、抑圧されてきた人々の鬱憤(うっぷん)がせきを切ったように見える。

 心配なのは、体制が脅かされる危機感から指導部が強硬姿勢を強めそうなことだ。既にネットの利用を制限して情報統制を強化し、実力での鎮圧に乗り出した。

 デモがさらに続けば、武力を行使する可能性も否定できない。対外的な強硬姿勢にもつながれば、ただでさえ混迷する中東地域の緊張を一層高める恐れがある。

 民衆を抑圧して体制維持を図るのは限界がある。革命から年月を経て、ひずみが拡大していることを指導部は認識すべきだ。

 言論や政治的な意見表明の自由を認める社会への転換に踏み出すときではないか。中東でのイランの存在感は大きい。国際社会の働きかけも重要になる。

(1月6日)

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