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〈午(うま)しりさがり、未(ひつじ)辛抱、申酉(さるとり)騒ぐ、戌(いぬ)笑い〉。干支(えと)にちなむ相場の格言だ。その通りなのか年明けの株式市場は大幅に値を上げた。安倍晋三首相も戌年にあやかりたいのだろう。年頭の記者会見で悲願の改憲へ高揚感が漂っていた

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「戌年の今年こそ新しい時代への希望を生み出すような憲法のあるべき姿を国民に提示する」とし国会の尻をたたいた。国民との温度差がありはしないか。直近の世論調査では「9条改正は必要ない」が53%、「国会論議は急ぐ必要はない」67%である

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憲法は国民の権利を守るため国家権力を縛る。そうした立憲主義は首相の姿勢にみじんも感じられない。自民党内にはブレーキ役はもう存在しないのか。かつては違った。元衆院憲法調査会長の中山太郎さんは「憲法は国民のもの」が口癖だった。だからこそ審議に工夫を重ねた

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以下は2011年11月、憲法審査会の発言だ。「憲法だけは政府なんかに手を突っ込まれずに、国会議員が国民を代表する形で議論しなくちゃいけない」「立憲主義は少数者の人権尊重から始まった。少数者の意見こそじっくり聞かなければならない」

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2007年年頭、第1次内閣を率いた首相は改憲を参院選の争点にすると表明。国会の対立が激化し与党は国民投票法を衆院特別委で強行採決した。委員長だった82歳の中山さんは怒号とやじに囲まれた。干支にあやかるのは相場だけでいい。改憲アクセルは国民の分断という禍根を残す。

(1月6日)

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