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米国東部の大学に入って数カ月。まだ友人は少なく、英語も伸び悩み、講義についていくのがやっとだった。卒業後を考える余裕などなく、毎日を過ごすのに必死だった。新成人を対象にした意識調査の結果を見ながら、そんな二十歳の頃を思い返していた

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民間調査会社マクロミルによると、将来の夢があると答えた新成人は54%で過去最低だったという。別の調査では、悩んでいることの筆頭に「未来」が挙がっていた。少子高齢化、自然環境の悪化、財政難、国際協調の衰退…。若い世代を不安にさせる社会要因は少なくない

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気になったのは、「グローバル人材になりたい」と考える人が半数近くいたことだ。大人が持ち出した意味の曖昧な“物差し”に惑わされないでほしい。どこにいようと、相手の側に立って考える力と、異なる価値観を受け止める感性をしっかり育めばいい

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米国で抱いたもんもんとした悩みは、小説や随筆、詩に向かった。はけ口を外部に求めず、内面にはね返す作家の姿勢から学ぶことは多かった。〈もっともっと貪婪(どんらん)にならないかぎり/なにごとも始りはしないのだ〉で結ばれる茨木のり子さんの詩を読んだのもこの頃だった

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自分に誠実に向き合っていれば、既成の価値観にとらわれることはない。支えてくれる周りの人たちとの関係を大切に紡ぎながら、希望する道を歩んでもらいたい。一人一人の生き方が、閉塞(へいそく)感の漂う社会に風穴をあけてくれるものと信じます。

(1月8日)

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