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慰安婦問題 合意の履行を粘り強く

 また蒸し返されてしまうのか。

 従軍慰安婦問題の解決を確認した2015年12月の日韓合意について韓国政府が新たな方針を発表した。

 合意に基づき日本政府が拠出した10億円を凍結するという。「両国間の公式合意だったという事実は否定できない」とし、再交渉は要求しないとした。

 日本としては冷静に対処していきたい。韓国に考え方を伝え、合意の着実な履行を粘り強く働き掛けていく必要がある。

 朴槿恵前政権時に結んだ合意である。問題の「最終的かつ不可逆的な解決」を確認した。▽日本は政府の責任を認め、韓国の財団に10億円を拠出▽韓国はソウルの日本大使館前にある慰安婦の被害を象徴する少女像の問題解決に努力する―という内容だ。

 韓国の外相は、日本が拠出した10億円と同額を韓国政府が拠出し日本拠出分の扱いは今後、日本側と協議すると表明した。日本に返すべきだとする一部の元慰安婦らの主張を踏まえたものだ。一部が解散を求めている財団の扱いも今後決めるとしている。

 韓国外相直属の作業部会は昨年12月、合意について「被害者の意見を十分に集約しなかった」とする報告書を公表した。その際、韓国外相は日韓関係への影響も考慮して慎重に対応を決めるとしていた。それだけに、約束をほごにするような方針は残念である。

 昨年5月に政権に就いた文在寅大統領は選挙戦で合意の見直しを訴えていた。報告書を受け「合意では問題が解決できないことを改めて明確にする」と表明した。半面、破棄は難しいとの認識も示している。新方針は発言に沿った内容とはいえ、分かりにくい。

 日本の拠出金を財源として財団が行った現金支給事業では、合意の時点で存命だった元慰安婦47人のうち36人が受け取ったか、受け取る意思を示した。理解と納得をさらに得られるよう努力するのが本来の姿勢ではないか。

 韓国政府は日本政府に対し「被害者の名誉や尊厳を回復し、心の傷を癒やす努力を続けることを期待する」とした。ならば、拠出金を活用し、そのための事業を協力して進めるべきである。

 日本は外交ルートを通じて韓国に抗議した。河野太郎外相は「さらなる措置を求めることは、全く受け入れられない」と非難している。一方で「しっかり説明を聞きたい」と事実関係の把握を急ぐ考えも示した。経過と韓国側の真意を見極めなくてはならない。

(1月10日)

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