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「写真を撮るときは気後れせず一歩前へ」。駆け出し記者のころ教わったせいか、いまもファインダーをのぞくと姿勢が前のめりになる。いつの間にか周りが目に入らなくなり、被写体と自分だけの世界。はた迷惑なこともあったろう

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ひんしゅくものが目立つのが伝統芸能の場だ。一昨年、飯山市の国重要無形民俗文化財「柱松柴燈(はしらまつさいとう)神事」での出来事を地元の主婦が本紙に寄せている。子どもらが見る一番前の席に写真愛好家の垣根ができた。フラッシュの雨で舞から重みが消えた―と

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地元にとって大勢に見てほしいものの雰囲気を壊されては困る。そんな問題解決のモデルになりそうなのがフラッシュを禁止した阿南町の「新野の雪祭り」である。14日夕から翌朝にかけ伊豆神社で行われる本祭り。効果は記録映像撮影のため2年前から始めた試行で実証済みだ

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その代わりに照明を仮設。1年目はあちこちでフラッシュが光り、係が嫌な顔をされながらお願いして回ったが、2年目はすっかり浸透した。すると厳かな神事本来の姿がよみがえった。保存会の舞い手らも古来の形を守ろうとする気持ちが強くなった

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ことしは境内に本格的なLED照明を設置。デジカメならフラッシュなしで十分撮影できるという。面を着けた神の化身が次々に舞う祭りは民俗学者折口信夫(しのぶ)も愛した。小中学校も休みにして地域一体で盛り上げる。雰囲気が一変し魅力を増した“ノーフラッシュ”。広げたい成果である。

(1月10日)

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