長野県のニュース

夫婦別姓 選べぬ社会をいつまで

 夫婦の同姓を定めた民法の規定を「合憲」と判断した最高裁の判決から2年余り。別姓を選べる制度の実現が一向に見えない現状に対し、新たな形で問題提起する動きである。

 結婚して妻の姓に変えた男性らが、仕事や生活に支障が生じたとして国に損害賠償を求める裁判を起こした。民法でなく戸籍法に着目した点がこれまでと異なる。

 外国人と結婚した場合は、戸籍法の規定に基づいて同姓か別姓かを選べる。なのに、日本人同士だと選べないのは戸籍法の欠陥であり、法の下の平等を定めた憲法に反すると訴えている。

 言い換えれば、民法上は同姓とし、戸籍法を改めて別姓を認める制度の提案だ。子どもは民法上の氏になるので混乱も起きないという。司法の判断によっては“風穴”が開くかもしれない。

 原告の1人でソフトウエア開発会社サイボウズ社長の青野慶久さんは、妻の姓に変えてみて不利益の大きさを痛感したという。仕事で旧姓の青野を使っているが、公式な書類は戸籍の姓にせざるを得ず、手間も費用もかかる。旧姓使用に法的根拠が与えられれば、救われる人は多いと話す。

 夫婦別姓をめぐって男性が訴訟を起こすのは珍しい。結婚で姓を変える男性は少なく、別姓は女性の問題と捉えられがちだ。そのこと自体、憲法が掲げる「両性の本質的平等」が根を張っていない現実を映し出している。

 最高裁は2015年の判決で民法の規定を合憲としつつ、全面的に是としてはいない。改姓による不利益をなくす法制度を作るのは立法府の役割だと指摘した。

 ただ、国会の動きは鈍い。法制審議会が1996年に答申した選択的夫婦別姓制度の導入は先送りされ続けてきた。司法がその状況を承知しながら立法府にげたを預けるのも責任の放棄に等しい。

 改姓は仕事や生活の不便さを伴うだけではない。氏名は人格の基礎である。姓を変えない選択は、尊厳や人格に関わる権利として尊重されなければならない。

 別姓は伝統を壊し、家族の一体感を損なうといった反対論も根強いが、夫婦同姓はそもそも明治期にできた制度だ。アジアでも欧州でも、今やほとんどの国で別姓を選べる。それが家族の崩壊につながっているとは思えない。

 家族のあり方は多様化している。同姓を選ぶ夫婦も、別姓を選ぶ夫婦もいていい。多数派の考えを押しつけず、個人の選択を認める社会を築きたい。

(1月10日)

最近の社説