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皇位継承儀式 国民と共に考える姿勢で

 またも議論を国民に明らかにしないのか。

 天皇陛下は来年4月30日に退位され、翌5月1日に皇太子さまが天皇に即位される。その儀式のあり方を話し合う政府の準備委員会が初会合を開いた。

 菅義偉官房長官をトップに内閣官房を中心とした7人が委員を務める。月1回のペースで開き、3月中旬に基本方針を決める。

 天皇の地位は国民の総意に基づく。憲法のこの規定は退位、即位に関する議論が国民に開かれ、共有できてこそ実現される。それが十分理解されているだろうか。

 政府は委員会の議論を非公開とした。1週間後をめどに「議事概要」を公表する。意見のやりとりが分かる議事録ではない。

 退位、即位の日取りを決めた昨年12月の皇室会議と同じ対応だ。この時の議事概要は、三権の長ら議員の意見はわずか5行ほどにまとめられ、あとは結論とその理由だった。

 異論があったにもかかわらず省かれてもいる。これでは説明責任を果たすどころか、誤った解釈を生みかねない。後世の人々が検証するためにも正確で詳細な記録の公表が欠かせない。

 皇位継承の儀式で最も大切なのは憲法との整合性だ。

 特に退位の儀式は憲政史上初めて行われる。生前退位を想定していない皇室典範に規定はない。

 前例は200年前の江戸時代にさかのぼる。この時は天皇が皇位を譲る旨を代理者が読み上げる「宣命(せんみょう)」があり、神器などが新天皇に引き継がれた。

 天皇が自らの意思で皇位を譲る形式になれば、憲法が禁じた政治的行為と受け取られかねない。

 一方、即位の儀式は現行憲法下の1990年に今の陛下が経験している。今回の準備委では早速、「内容を踏襲すべきだ」との意見が出たという。

 この時の即位の礼などは、司法が「政教分離違反の疑いを否定できない」(大阪高裁)と指摘した。憲法上の疑義を持たれていることを忘れてはならない。

 議論の透明化を図ることは、偏った結論にならないよう国民が監視する意味もある。

 国民の代表である国会の役割も重要だ。退位の法整備は「静かな環境で」という掛け声の下、オープンな議論を避け、国民を蚊帳の外に置いた。

 22日に通常国会が始まる。開かれた場での深い議論を通じ、「象徴」の意味を国民が共に考える機会にしたい。

(1月11日)

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