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経団連新会長 政権に物申す役割こそ

 経団連次期会長に、日立製作所会長の中西宏明氏が内定した。

 経営難だった日立を復活させた手腕などが評価され、当初から本命とされてきた。経団連会長は「財界総理」とも呼ばれる。企業の立場から政策を立案し、政府に実現を働きかけるのが役割だ。デフレ脱却など長年の懸念を民間主導で達成できるのか。政権に物申す役割が求められる。

 企業業績は世界的な好景気に支えられて好調だ。一方で個人消費は停滞しており、物価も日銀の思うようには上昇しない。

 背景には、人口減に伴う市場縮小や、社会保障の持続可能性などの将来不安で、人件費や投資に資金を十分に回さない企業の姿勢がある。経団連は自動車や鉄鋼、電機といった企業で構成している。動向は日本経済の行方に影響を与える。持続した成長軌道に乗せるため、やるべきことは多い。

 気になるのは、安倍政権との距離感である。

 榊原定征現会長は、政府との関係について「車の両輪」と強調し、連携強化を重視してきた。

 安倍政権が消費税の使途変更を表明し、財政健全化目標の達成を断念した際も歓迎する意向を示した。春闘では首相の意向を受け入れる「官製春闘」が定着。会員には事実上、自民党への献金を4年連続で呼び掛けた。政権との「蜜月関係」が際立つ運営だった。

 中西氏は安倍首相を囲む財界人の集まり「さくら会」のメンバーでもある。次期会長に選出された理由の一つには「安倍政権との近さ」があるとされ、榊原氏の路線を引き継ぐとみられる。

 ただし、これまで以上の懸念がある。日立出身者が経団連会長に就任するのは初めてだ。防衛産業や原子力産業に関わる企業が財界トップに就くのは望ましくないという声があったからだ。

 日立は英国で原発新設事業を計画している。総額3兆円とされる事業費は政府の支援も得て、政府系金融機関が軸となって融資や出資で調達する方向で調整中だ。

 そうした状況で、中西氏は政権に対し、是々非々の対応を貫けるのか。注視する必要がある。

 先進国で最悪とされるほど膨れ上がった国の借金や、出口戦略が見通せない日銀の大規模金融緩和など、政権に注文を付けなければならないことは多いはずだ。

 中西氏は「政治との対話をこれからも充実させたい」と述べている。一方的に注文を聞き、政権に追従することは対話ではない。新会長は肝に銘じてほしい。

(1月12日)

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