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戦後数多くの冤罪(えんざい)事件を手掛けた正木ひろしさん(1896〜1975年)の名弁護ぶりは今も語り草になっている。八海事件、菅生事件、丸正事件…。正義感に燃え、食らい付くと離さない。捜査の弱点を徹底的に暴き真相に迫った

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戦時中も軍国主義を痛烈に批判する雑誌を出すなど反権力は筋金入り。その“反骨の人”が20代後半に2年余り、旧制飯田中学(現飯田高校)で英語を教えたことがある。遠方を希望して大学在籍のまま赴任したが、関東大震災で実家が被災し帰京した

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結婚し生計のため、教師と二足わらじで始めたのが弁護士だ。当時は帝大法科を卒業すると資格が得られた。昭和恐慌、満州事変と不安が高まった時代、正木さんは教師経験を生かして学校の選び方、受験必勝法を著している。アドバイスは当時の社会批判も込めながら前向きだ

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受験に失敗しスタートが遅れても、その分長く生きればいい。学校や職業の選択は労を惜しまず、本当に好きなことを見つけなさい―。教育は個性を引き出し発展させるものなのに、個性無視、詰め込み主義になっている―とも。今に通じるものがある

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ずさんな試験問題は優秀な学生を苦しめる。教師の能力を考慮しクロスワードのつもりで臨めば解きやすい―。皮肉が効いたアドバイスは大阪大の出題ミスに重なる。さあ、きょうから大学入試センター試験。90年近く前の学生も同じ思いだった、と考えれば余分な力みが無くなるのでは。

(1月13日)

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