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社会のSOSは意外な形で現れる。10年前の「蟹工船ブーム」もその一つだろう。過酷な労働に耐えかねて闘争に立ち上がる労働者を描いたプロレタリア文学の代表作が、若者に支持された。ワーキングプアが問題になっていたときだ

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その予感は的中する。間もなくリーマン・ショックが起き、雇い止めや派遣切り、内定取り消しが横行した。寮から立ち退かされた人々の「年越し派遣村」の記憶はまだ生々しい。弱い立場の労働者を追い詰めてはならない―。社会が学んだ教訓である

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この統計もSOSととらえたい。厚生労働省がまとめた外国人技能実習生の労災死の実態である。16年度までの3年間で計22人、雇用者全体の比率を大きく上回る。実習生は16年末で約23万人、零細企業が大半だ。労災隠しが多い中で、氷山の一角であることは容易に想像できる

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制度ができて四半世紀。建前と現実がかけ離れているのを承知で、政府は適用を広げてきた。法律は、開発途上地域への技術移転と経済発展を担う人づくりに協力する―とうたう。その実は景気変動の調節弁になる割安な労働力として都合よく使われる

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来日費用の借金に縛られ、強制帰国を恐れて劣悪な環境に耐えている。言葉が通じず孤立している―。紙面に載った“現代の蟹工船”の一端だ。もうSOSに見て見ぬふりはできない。人手不足の業界からは制度拡大の声が増す。ならば定住を認め、仲間として受け入れる覚悟があるのか。

(1月17日)

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