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住所漏えい 命に関わる危険に警鐘

 しつこくつきまとうストーカー行為や、DV(家庭内の暴力)は深刻な被害を生み、命に関わる重大な事件も相次いでいる。個人情報を取り扱うすべての自治体、機関が自らへの警鐘と受け止めなくてはならない。

 神奈川県逗子市で2012年に起きたストーカー殺人事件をめぐる裁判である。殺害された女性の住所を加害者側に伝えた市職員の過失を認定し、賠償を市に命じる判決を横浜地裁が出した。

 住所は、加害者に知られると生命身体に危険が生じる恐れがある重要な情報だと指摘。漏らした行為は地方公務員の守秘義務に違反し、プライバシーの侵害にあたると判断した。

 加害者の男の依頼で探偵業者が市の納税課に電話し、夫を装って聞き出したという。女性の自宅へ男が押しかけ、事件が起きたのはその翌日である。

 加害者は元交際相手で、電話やメールを執拗(しつよう)に繰り返し、女性の結婚後は「殺す」と脅すようになった。女性は市に個人情報の閲覧・開示の制限を申し出ている。

 にもかかわらず、漏えいを防げず、最悪の事態に至った。裁判は、市に重大な責任があるとして夫が起こしていた。

 事件後、ストーカーやDV被害者の個人情報の管理を厳格にする自治体は増えている。閲覧制限がかかっていることを職員が使う端末に警告表示する、といった対策を取ったところもある。

 それでも、誤って加害者に開示した事例は千葉、東京など各地で相次ぐ。暴力を振るわれて避難した妻の住所が分かる書類を夫に送付してしまった自治体も目につく。漏えいの多くは、逗子と同様、住民票を直接扱う部署以外で起きているという。

 浮かび上がるのは、個人情報を命の危険に結びつくものとして取り扱う意識が根づいていない実態だ。自治体はあらためて徹底を図る必要がある。万が一漏れたとき、被害を最小限に抑える対応を考えておくことも重要になる。

 一方で見落とせないことがある。児童虐待や高齢者らの孤独死をめぐっては、個人情報の壁が関係機関や地域の連携を妨げていると指摘されてきた。災害時に援護すべき人を把握しておくためにも情報の共有は欠かせない。

 漏れてはならない個人情報は厳重に管理、保護する。同時に、あらかじめ本人の同意を得ることなど明確な条件を設けて、必要な情報を開示できる仕組みを整えることも自治体の役目である。

(1月17日)

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