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アーキビスト 頼りがいある専門職に

 公文書管理の専門職アーキビストの養成に向け、備えるべき資質の基準を国立公文書館が定めた。職務を進める基本姿勢として公平・中立を守ることや、圧力に屈しない高い倫理観と誇りを持つよう求めている。

 公文書を適切に管理しつつ、国民や研究者の求めに応じて提供する仕事である。憲法がうたう「知る権利」を現場で保障する役目とも言える。国民への説明責任を果たす最前線でもある。

 国民や専門家の意見を聞きながら細部を詰めて、頼りがいある仕組みを確立したい。

 アーキビストとは何か。国立公文書館は「高度な専門性と倫理観をもって、重要な公文書、歴史資料の収集、保存、利用の職務を行う者」と定義している。情報公開で日本の数歩先を行く欧米では、民主社会に必要不可欠な仕事とされているという。

 公文書の山の中から自分が目当てとするものを探し出すのは、文書の扱いに慣れた研究者であっても大仕事だ。アーキビストの手助けが欠かせない。

 例えば後藤春美東京大教授は自著に「イギリスでアーキビストに質問をし、その豊富な知識と優れた補助ぶりに感銘を受ける研究者は多い」と書いている。

 公文書がいいかげんに扱われるケースが後を絶たない。薬害エイズ問題では関係書類が旧厚生省の倉庫の奥深くにしまい込まれていた。森友学園への国有地売却で財務省は、関係書類は「廃棄した」との説明で押し通した。

 公文書管理法の趣旨に照らして許されないことである。各省にアーキビストがいれば抑止効果が期待できるかもしれない。

 千葉県文書館で昨年、長期保存するはずの戦没者名簿など91冊が廃棄されたことが問題化した。専門知識のない職員が誤って廃棄したのだ。アーキビストは自治体にも欠かせない。

 国立公文書館の基準が「公平・中立」や「圧力に屈しない倫理観と誇り」をうたっていることは重要だ。時の政権への忖度(そんたく)などにより、存在する文書がないことにされるようでは困る。

 公文書の適切な管理は、公文書館などハード面と運用のソフト面の両方がきちんと機能しないと難しい。アーキビストはソフト面で最重要のものである。

 公文書管理法に職務内容を明記し公的な資格にした上で、国立、公立の公文書館への配置を義務付ければ理想的だ。今度の基準を議論の弾みにしたい。

(1月19日)

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