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医師の働き方 過労防ぐ環境づくりを

 命と健康を守るはずの医師が、長時間労働による過労で亡くなる例が後を絶たない。それでも政府の働き方改革実行計画で医師は残業上限規制の適用が5年間猶予された。

 早急に労働環境を整え、これ以上犠牲者を出さないようにしなければならない。

 昨年度1年間だけで、長時間労働を原因として4人の医師が過労死や過労自殺(未遂を含む)で労災認定された。

 都内の総合病院の産婦人科研修医は2015年、精神疾患を発症して自殺している。時間外労働は最長で月208時間に及んだ。

 業務と発症との関連性が高くなる「過労死ライン」である月80時間の2・6倍。実行計画で規制された「最長月100時間」もはるかに上回る。休日は半年間で5日しかなかった。

 総務省の調査では週60時間以上働く雇用者の割合を職種別にみると、医師が4割余で最も高い。長時間労働の是正は急務である。

 それを阻んでいるのが「応召義務」と呼ばれる医師法の規定だ。正当な理由がなければ、診療の求めを拒んではならないとされている。残業上限規制の適用が見送られた理由の一つだ。

 医師の働き方に関する厚生労働省の検討会でも論点として挙がっている。患者の診療機会が損なわれないように、医師個人ではなく組織が対応することを想定し、議論を進めていくことになった。

 妥当な方向性である。

 医師の多くが自宅で開業していた明治時代の旧刑法に罰則付きで盛られた規定で、戦後も医師法に残った。今は罰則はないが違反すると医師免許取り消しなどの対象になる可能性もある。

 緊急医制度や救急体制が整った現代に、医師個人の義務のままにしておくのは無理がある。

 ただ、医師の残業規制を画一的に実施すれば、医師不足の地方の医療が危機に陥りかねない。過重な負担を減らす態勢を同時につくっていく必要がある。

 長期的には医師の偏在、不足を解消することだが、短期的な対策もある。医師でなくてもできることを看護師や薬剤師、事務職がもっと引き受ける余地がないか見直すこともその一つだ。

 緊急性が低いのに救急窓口を利用する「コンビニ受診」や、何でも大病院の志向を改めるなど患者の側もできることがある。

 医師が健康に働いてこそ医療の安全と安心が保たれると肝に銘じたい。

(1月19日)

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