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〈唄を忘れた金糸雀(かなりや)〉は山に棄(す)てるか、むちでたたこうか。それではかわいそうと西条八十の詞は続く。〓(歌記号)象牙の船に銀の櫂(かい)/月夜の海に浮(うか)べれば/忘れた唄をおもいだす。童謡「かなりや」は自分の姿を取り戻す再生の物語だろうか

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波に漂うオウム真理教の脱会信者に「船」を用意したのは弁護士の滝本太郎さんだ。社会復帰を支援する活動を続け1995年、元信者と「カナリヤの会」を発足させた。教祖麻原彰晃(松本智津夫死刑囚)の指示によりサリンで襲撃された経験もある

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松本や東京の地下鉄でのサリン事件から20年余。裁判が事実上終わり滝本さんはコメントを出した。元弟子の12人の死刑囚は刑を執行せず、なぜ教祖の指示で事件を起こしたのか語り尽くしてもらわねばならない。オウム教団や松本死刑囚が喜ぶ「殉教者」にしてはならない、と

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オウム真理教は2000年に「アレフ」に改称した。施設内には松本死刑囚の写真を飾り「信仰」を隠そうとはしない。交流サイト(SNS)を使って若者を勧誘。東京の拠点に出入りする若者が増えているという。一連の事件を知らない世代だろうか

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教義や階級にがんじがらめにされ教祖の指示に絶対服従だったオウム事件に何を学ぶか。一番恐ろしいのは、「いい人」が「いいこと」をするつもりで起こした点だ。それを若者に伝えなければ―。滝本さんの言葉だ。カルトに吸い寄せられそうな若者を救い自分を取り戻させる船がいる。

(1月21日)

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