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憲法の岐路 首相の姿勢 国民が見えているのか

 改憲に向けて安倍晋三首相が前のめり姿勢を強めている。

 なぜ今憲法を変えるのか、納得のいく説明はない。国民の多くも首をかしげている。

 民意との乖離(かいり)に目をつむったまま、首相と自民党が改憲に突き進まないか心配になる。

 首相は改憲について施政方針演説では簡単に触れただけだった。「各党が案を持ち寄り憲法審査会で議論を深めて前に進めていくことを期待する」と述べた。

 先立つ自民党の会合では、改憲は党是と述べた上で「いよいよ実現する時を迎えている。責任を果たそう」とハッパを掛けている。首相と党総裁の立場を使い分けるいつものやり方である。本音は無論こちらの方だ。

 3月の党大会で党としての改憲案を決定し衆参の憲法審査会に提示、今の国会か秋の臨時国会で国民に向け発議して国民投票にこぎ着ける―。党内ではこんなシナリオが語られている。国民投票で有効投票の過半数の賛成があれば憲法は変わる。

 国民は慎重だ。共同通信の13、14日の世論調査では安倍首相の下での改憲に55%が反対と答えている。賛成は33%にとどまる。首相の姿勢との隔たりは大きい。

 今の状態で国民投票を行ったら否決される可能性が大きい。首相の進退が問われるのは避けられない。実際欧州では近年、国民投票の結果を受けて政治指導者が辞任に追い込まれるケースが続く。

 投票が責任問題に直結することを首相は十分に承知しているはずだ。国民の間に改憲機運を盛り上げるために、さまざまな手段を繰り出してくるだろう。向こう1年間、首相と自民党の動きを注視しなければならない。

 野党第1党、立憲民主党の枝野幸男代表は首相の言動を厳しく批判している。違憲の集団的自衛権と安保法制を前提にした改憲論議は容認できない、と。

 与党公明党も現段階での発議には慎重だ。山口那津男代表は「国会でまだ議論が十分深まっていない」と述べている。

 そもそも自民党が打ち出している9条への自衛隊明記、緊急事態条項など改憲4項目そのものが、必要性、妥当性に疑問符が付くものばかりだ。

 結局のところ、占領下で決まった憲法を変えたいという首相の思いだけが際立つ今の状況だ。国民不在の改憲論議には乗れない。

(1月24日)

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