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再生可能エネルギー 国の本気度が足りない

 「九電ショック」という言葉がある。

 2014年9月の九州電力の発表を指す。再生可能エネルギーの電力を買い取る契約の受け付けを一時中断する内容だった。

 東日本大震災後に導

入された固定価格買い

取り制度の影響で、再生エネは太陽光発電を中心に急速に広がっていた。九電は全て接続すると送電設備の容量が足りなくなる恐れがあるとした。買い取り中断は北海道、東北、四国電力など計5電力に広がった。

 再生エネ普及の機運に浴びせた「冷や水」だった。



   <大きすぎる参入障壁>

 いま、電力会社の送電設備の容量に対して、各方面から疑問が投げ掛けられている。

 一つのきっかけは、京都大大学院経済学研究科の調査だ。

 東北電力は17年8月時点で、青森、秋田、岩手各県の送電線の「空き容量」はゼロと発表していた。それに対し、同研究科が16年9月から17年8月の送電線運用データを分析したところ、利用率は2〜18%にとどまるという結果が出た。北海道でも最大で15%程度しか利用されていなかった。

 この差はなぜ生じたのか。

 送電線の容量は、周辺の全ての発電所がフル運転した場合を想定して算出する。計算上満杯になれば新たな電源は接続できない。再生エネの業者が接続するには、送電線の増強費を負担する必要がある。参入障壁の一つだ。

 日本の方式は、世界でも一部の国しか採用していない。欧米では、実際の電気の流れを予測し、送電線容量が十分か判断する。周辺の発電所は全て送電線に接続し、混雑する場合は発電所の出力を制御して、容量がオーバーしないよう調整する。これを「コネクト&マネージ」と呼ぶ。

 日本風力発電協会は昨年12月、「コネクト&マネージ」を導入するよう資源エネルギー庁に要望。太陽光発電協会も必要性を主張している。参入が容易になり、コストも下がるという思惑がある。

 再生エネの普及は思うように進んでいない。資源エネルギー庁によると、再生エネが全発電量に占める割合は15%程度だ。しかも大半は水力発電で、伸びている太陽光も4・8%にすぎない。

 政府は30年度の電源構成比率で、再生エネを22〜24%に高める方針を掲げている。世界の現在の平均は24%程度で、日本の目標そのものの水準が低い。その達成すら見通せない。

 再生エネのコスト低減が進まないことが理由との指摘は根強い。日本の太陽光発電のコストはドイツの2倍とされる。制度面の不備が一因となっている可能性は否定できない。

 資源エネルギー庁は「コネクト&マネージ」について今後検討していく。これまでの延長ではなくエネルギー供給構造を抜本的に変える心構えで取り組むべきだ。問われるのは国の本気度である。

 それには各電源に対する認識を改めなければならない。

 コストが安く、安定的に電力供給できる電源を「ベースロード電源」という。政府は原発と石炭火力、水力、地熱をこれに分類し、電源比率を高めることが必要としている。天候に発電量が左右される再生エネは、中心的な電源にならないという位置付けだ。

 そのため、電力会社は再生エネの接続を拒否でき、過剰時は太陽光や風力などが抑制されて、原子力や水力は温存される。抑制時の損失も事業者に補償されない。リスクの大きさは明らかだ。事業者の参入意欲を鈍らせる。

 世界の潮流は逆である。

 欧州は再生エネの送電網接続を送電会社に義務付けている。発電量を抑制する場合は、まずは石炭火力、原発、水力の出力を抑える。太陽光や風力の出力抑制は「最後の手段」である。

 送電線の増強費も送電事業者の負担だ。再生エネの事業リスクは最小限に抑えられている。

 京大大学院経済学研究科の安田陽特任教授は「欧州にとってエネルギーを自給自足できる再生エネの普及は国家戦略であり、エネルギー安全保障上、極めて重要という認識がある」と指摘する。



   <周回遅れになる前に>

 日本のエネルギー自給率は8%程度にすぎない。政府が推進する原発も燃料は輸入が頼りで、エネルギー自給を目指した核燃料サイクル計画も頓挫した。再生エネは温暖化防止にもつながる。本格推進に取り組むべき理由は多い。

 中国を中心としたアジア太平洋地域でも再生エネは急増している。太陽光発電の発電能力は16年に世界全体の48%を占め、欧州を抜き去った。

 日本の立ち遅れは際立っている。周回遅れになる前に新たな一歩を踏み出さなければならない。

(1月28日)

長野県のニュース(1月28日)