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「自己決定へ十分な情報を」新出生前診断拡大方針に県内関係者

 妊婦の血液で胎児の染色体異常を調べる新出生前診断を巡り、日本産科婦人科学会が一般診療として実施施設を拡大する方針を29日までに固めたことに、県内の関係者からは「妊婦の自己決定を支えるために、正しい情報提供が重要だ」といった声が聞かれた。

 県内には、2013年に始まった新出生前診断で臨床研究に参加している医療機関はない。元信州大医学部長で、新出生前診断時の「遺伝カウンセリング」の重要性を唱えてきた日本人類遺伝学会監事の福嶋義光さん(66)は「一般診療に広げたとしても、検査時に中立的な情報を提供して妊婦の自己決定を支える仕組みを保証し、認定施設が一定の管理下で続けていくことが欠かせない」と強調する。

 新出生前診断は、遺伝性疾患について説明できる遺伝カウンセリング体制を整備していることなどが施設の要件。県内でこれに対応できるのは県立こども病院(安曇野市)と信州大病院(松本市)だが、医師ら有志がこれまでに可能性を話し合ったものの導入を見送ってきた。現在、出生前診断で行っている羊水検査などでもカウンセリングを重視しており、新出生前診断の希望者まで広げるのが難しい―ことなどから慎重に対応している。

 信大医学部教授で産婦人科医の金井誠さん(56)は新出生前診断を巡り、「簡単な検査という印象が独り歩きしているが、陽性を確定するには流産のリスクがある羊水検査が必要になる。それでも腹部に針を刺すという覚悟で受けている人はどれだけいるだろうか」と疑問視する。「新出生前診断が知られるようになったからこそ、一般の産科でも検査が気になる人に正しい情報提供ができるようにしていくことが大事だ」と話す。

 心臓や消化器の病気を併発しやすい18トリソミーの子を持つ親の会「18っこのわ」の代表堤寛子さん(43)=長野市=は「生まれてから病気になったり、障害を負ったりすることもあるのに、18トリソミーだからといって出生前に選別されてしまうのは悲しい。家族にとってはかけがえのない子どもたち」と話す。

 堤さんも出産前に子どもの病気が分かり、不安になった。「親が悩み抜いて決めた結論なら否定はできない。そのためにも、新出生前診断の結果や、診断名の先入観だけで出産を諦めることがないよう、検査時には適切な情報を伝えてほしい」と望んでいる。

(1月30日)

長野県のニュース(1月30日)