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父から子へ 紡ぐ物語 筋ジスの土屋さん児童文学出版 佐久

「ぼくにできること」を手にする土屋さん。物語の主人公「リュウちゃん」は小学生時代の土屋さんをモデルにしている「ぼくにできること」を手にする土屋さん。物語の主人公「リュウちゃん」は小学生時代の土屋さんをモデルにしている
 難病の筋ジストロフィーにより体を動かすことがままならない佐久市塚原の会社員土屋竜一さん(53)が2月1日、自らの小学生時代の体験を基につづった児童文学「ぼくにできること」をみらいパブリッシング(東京)から出版する。幼少期、父母に絵本の読み聞かせをしてもらったという土屋さん。病のため声を出すのは難しいが、父として子どもに「できること」は何かと考え、紡ぎ出した創作物語だ。

 「ぼくにできること」はA5判変形の168ページ。長女で高校1年の美音(みお)さん(16)が6歳、長男で中学1年の奏人(かなと)さん(13)が3歳だったころから書き続けた物語のうち、10話を収録した。それぞれの物語は、動かせる小指でパソコンを操作し、菜箸でキーボードを打ってつづった。

 物語は、小学生時代の土屋さんをモデルとした「リュウちゃん」が主人公。負けず嫌いでわんぱくな性格だが、走るのが苦手でいつも転んでばかり。10歳の頃、駆けっこの途中で急に足の力が抜けて倒れ、筋ジストロフィーの兆候が表れ始める。バスの乗り降りに時間がかかったり、遠足の登山ではロープを体に巻き付け、クラスメートに引っ張ってもらって登ったりと、苦労が語られる。

 別の物語では、ある雨の日、傘を忘れたリュウちゃんを、家まで「相合い傘」をして送ってくれた「高校生のおねえさん」への恋心をユーモアを交えて描いている。

 土屋さんは10歳で筋ジストロフィーと診断され、20歳くらいまでの命と医師から言われた。高校時代、コンピューターで作曲しシンガー・ソングライターの活動を始めたが、30代になると呼吸不全となり気管を切開。人工呼吸器を使うため、発声を補助する器具を使わないと声が出せなくなり、エッセーなどの執筆に専念してきた。現在は、IT関連企業に在宅で勤め、ホームページ作成などに携わっている。

 「病気のためにつらい思いをしたが、病気だったからこそ出会えた人もいた」と土屋さん。「良い思い出も嫌な経験も、全てが宝物。物語にちりばめたいろいろな出会いの大切さを、子どもたちに感じ取ってほしい」と話している。

(1月31日)

長野県のニュース(1月31日)