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憲法の岐路 自衛隊明記案 抑制的に装うまやかし

 9条を改めても影響は小さいと印象付けたいのだろう。

 憲法に自衛隊を明記する案について安倍晋三首相が「2項の制限がかかる」と述べ、抑制的な提案であるとの考えを示した。まやかしの論法を受け入れることはできない。

 首相は昨年5月、9条改憲を提案した。戦争放棄の1項、戦力不保持と交戦権否認の2項を残しつつ、自衛隊を書き込もうというものだ。今国会でも実現への意欲を重ねて表明している。

 自衛隊の明記で全面的な集団的自衛権が行使できるようになるか問われ、「制限がかかる」と答弁した。「今までの政府と同じ解釈だから、安全保障関連法を制定したときの(武力行使の)新3要件がかかる」としている。

 一方、自民党内に議論がある2項削除について「書き込み方で全面的な行使容認が可能になる」として否定的な考えを示した。

 自衛隊明記の具体的な条文案はまだまとまっていない。どう書き込むのか分からないのになぜ、制限がかかると言えるのか。根拠のない主張だ。憲法に自衛隊を書き加えた場合、合憲性を問われる場面が失われ、2項が空文化する恐れは否定できない。

 自民の2012年の草案は2項を改め、国防軍の保持を盛っている。首相は過去に「党総裁である自身の考えが党草案と違うことはあり得ない」とも述べていた。発言の整合性も問われる。

 仮に2項削除より抑制的な案だとしても問題は残る。限定的であれ、集団的自衛権の行使は違憲の疑いが消えない。歴代の政権が憲法上許されないとしてきたにもかかわらず、納得のいく説明のないまま解釈変更で解禁した。

 日本が攻撃されたときに初めて防衛力を行使するとしてきた「専守防衛」は変質している。密接な関係にある他国への攻撃でも、政府が「存立危機事態」と認定すれば行使できる。このまま明記すれば憲法の枠を超えかねない現状にお墨付きを与えることになる。

 首相は「憲法違反かもしれないが何かあれば命を張ってくれと言うのは無責任だ」と改憲論議を促している。明記によって「自衛隊の任務や権限に変更が生じることはない」とも説明する。

 何も変わらないのに改憲が必要なのか。明記しても、自衛隊と憲法を巡る議論が終わるわけではない。首相の言葉に説得力はない。

(2月1日)

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