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厳しい寒さゆえだろうか。北海道には温もりを感じさせる言葉がある。「なんもさ」はその筆頭だ。「世話になってすまんね」と礼を言われ「なんもさ」と返す。「どういたしまして」の意味だ。心が解け合うような親しい響きがある

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札幌市の合同会社「なんもさサポート」は生活困窮者の自立支援に力を注いできた。ホームレスや出所した元受刑者らを受け入れ、借り上げたアパートなどに下宿させる。運営する食堂で働きつつ人間関係を築く。一人一人に寄り添う支援を重ねてきた

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その下宿の一つ「そしあるハイム」から出火した。元旅館の古い3階建ては瞬く間に燃え広がり11人が逃げ遅れた。近くの焼き鳥店経営者は炎にあおられながら窓の格子をスコップでこじ開け女性を救出した。2階から「助けて」と叫んでいた別の女性の声は、火柱の中に消えた

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悲劇が繰り返されている。福祉施設の集団生活になじめない。障害があっても身寄りがなく帰る家がない。そんな人々がたどり着いた住まい。低家賃ゆえに狭い個室が密集し、消火設備を整えれば家賃の値上げを招いて住めなくなる。ジレンマは深刻だ

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「そしあるハイム」の入居者は玄関の長椅子に腰掛けて談笑する姿がよく見られた。民生委員が声を掛けると会釈で応じていた。近くのラーメン店主はなじみの入居者に100円でラーメンを提供していた。「なんもさ」が通い合っていた日常。それを奪った炎。やりきれない現実である。

(2月2日)

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