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支援住宅火災 惨事生む住まいの貧困

 生活に困り、たどり着いた防火設備不十分の古い施設で火災に遭い、亡くなる。こんな惨事が後を絶たない。

 1月31日深夜に発生した札幌市の自立支援住宅の火災も同様だ。生活保護を受けて暮らしていた高齢者ら11人が犠牲になった。

 出火の原因を究明するとともに、背景にある住まいの貧困に目を向けなければならない。

 木造一部3階建ての住宅は築50年近くたっており、老朽化が火の回りを早めた一因とみられる。

 40〜80代の16人が各自6畳一間で暮らし、部屋は全て埋まっていた。亡くなった人は大半が高齢者で生活保護受給者だった。身寄りがなく、1人で食事や入浴ができず介護を必要とする人もいた。

 それでも夜間、職員は常駐していなかった。入居者は火や煙に包まれながら自力避難できなかったのではないか。

 旅館だった建物を市内の合同会社が借り、14年前に下宿に用途を変更して、運営していた。新たな住居や就職先が見つかるまで一時的に高齢者らを受け入れるのが目的だが、実際は長く入居している人も少なくなかったようだ。

 各部屋には石油ファンヒーターが置かれ、火災報知機が設置されていたものの、スプリンクラーはなかった。こうした施設は「無料・低額宿泊所」に分類され、スプリンクラーの設置義務そのものがない。

 同様の火災が起きるたびに防火設備の不備が指摘されてきたが、現場はジレンマも抱える。設備を充実させれば家賃が上がり、高齢者や貧困者は入居が難しくなる。夜間に職員を置くことも同様だ。施設運営者からは行政の支援を求める声が上がっている。

 厚生労働省によると、無料・低額宿泊所は大都市部を中心に、届け出がされているだけで500余りあり、約1万5600人が暮らす。無届けを含めると約1200施設あるとみられている。

 身寄りのない高齢者が住まいを探すのは難しい。家賃の滞納や孤独死を嫌って入居を拒む家主や業者が多いからだ。

 一方で、家賃が安い公営住宅は不足し、介護施設もなかなか空きが出ない。居住環境が悪くてもこうした宿泊所に頼らざるを得ない現実がある。そんな中で政府は生活保護の住宅扶助基準額を引き下げている。現実と懸け離れているのではないか。

 経済状況に左右されず安心して暮らせる確かな仕組みが必要だ。相次ぐ施設火災は教えている。

(2月2日)

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