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在外被爆者 国の怠慢見過ごす判決

 政府は長く、海外に住む被爆者を援護制度の枠外に置き、本来なすべき救済や支援を怠ってきた。その責任を見過ごすに等しい、納得しがたい判決だ。

 韓国籍の在外被爆者の遺族150人余が国に損害賠償を求めた集団訴訟で、大阪地裁が訴えを全面的に退けた。死後20年以上が過ぎたことにより、請求権そのものが消えたとの判断である。

 「除斥(じょせき)期間」という考え方に基づく。損害賠償を請求する権利は不法行為があったときから20年で消滅すると定めた民法の条文が根拠となっている。

 時効と異なり、中断しない。当事者に請求できない事情があっても考慮されないため、戦後補償や水俣病をめぐる裁判でも被害者の救済を阻む壁になってきた。

 ただ、最高裁は1998年、著しく正義、公平に反する場合は除斥期間の適用を制限できるとの判断を示している。在外被爆者が排除されてきた歴史を踏まえれば、大阪地裁が今回、除斥を認めた判断は妥当と言えない。

 国内、国外のどこに住んでいても被爆者であることに変わりはない。被爆者援護法は、医療費や手当の支給要件として居住地や国籍を限定していない。

 にもかかわらず、旧厚生省は74年、国外に居住する場合は受給権を失うとする通達を出し、在外被爆者を援護の対象から外した。手当の打ち切りを違法とする司法判断が確定し、通達が廃止されたのは2003年である。

 最高裁は07年、通達自体を違法と断じる判決を出し、国の賠償義務が確定した。政府はその後、広島、長崎を含む3地裁で集団訴訟に加わった原告と和解する形で賠償に応じてきた。

 ところが一昨年、姿勢を一転させる。除斥期間を理由に、死後20年以上を経た遺族との和解を拒否するようになった。

 法の趣旨を曲げる運用を続けてきた政府が今さら除斥を主張し、賠償責任を免れようとする。そのこと自体、信義に反する。

 これまで不注意で除斥期間に気づかなかったという政府の言い分を裁判所がそのまま認めたことも司法の責務の放棄と言うほかない。死後20年が過ぎる前に提訴は可能だったと述べた判決は、国外に住む遺族には酷に過ぎる。

 いまだ提訴に至っていない遺族も多い。除斥期間が認められれば、新たな提訴も事実上できなくなる。救済の道を閉ざし、在外被爆者を再び置き去りにすることがあってはならない。

(2月2日)

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