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札幌の火災 責任を押し付けるのか

 札幌市の自立支援住宅「そしあるハイム」の火災を受け、行政が早速動き始めた。

 札幌市は、生活保護受給者らが暮らす市内の同種の住宅への立ち入り調査を始めた。ハイムが無届けの老人ホームに当たるかどうかも調べるとしている。

 厚生労働省も職員を現地に派遣した。生活困窮者に居場所を提供する「無料・低額宿泊所」への規制を強化する構えでいる。

 対策は大切だけれど、行政は住まいさえ確保できない人たちの受け皿づくりを、民間任せにしてきた。その怠慢を棚上げにしたのでは事の本質を見失う。

 ハイムの入居者の大半は高齢者で、身寄りがなく介護が必要な人もいた。運営する合同会社は「下宿」として届け出ていた。

 老人ホームとみなされれば、消防法や建築基準法に基づく防火対策を欠いたことになる。市は、実態は老人ホームとした上で責任を追及するつもりだろうか。

 ハイムの実情に近い無料・低額宿泊所には、消防法順守の指針はあるものの法的強制力はない。生活保護費を目当てに、劣悪な環境に受給者を住まわせる「貧困ビジネス」の原因とされてきた。

 厚労省は、開設前の届け出の義務化、防火態勢基準の設定、自治体による改善命令といった規制強化案を示している。

 問われるべきは、その後に行政が何をなすかだ。

 ハイムのような住宅に集まるのは、高齢や病気で就労が難しく、民間の賃貸物件に拒まれ、福祉施設にも入れない人たちだ。受け入れるNPOや会社の多くが、ぎりぎりの資金で運営している。

 新たな防火基準を満たす建物を用意できず、撤退するかもしれない。行政が改修費用を補てんするのか。民間に代わり責任をもって住居を確保できるのか。

 無料・低額宿泊所は各地で増えているのに、国や自治体の支援に向けた動きは鈍い。それどころか厚労省は、生活保護費のうち、食費や光熱費に充てる生活扶助の引き下げを決めている。

 安倍晋三首相は昨日の衆院予算委員会で、自公政権に戻り格差を表す指標は改善したと強調していた。現実が見えていない。

 164万世帯が生活保護費を受給し、その半数を単身の高齢者世帯が占めている。低料金の住まいを頼みの綱とする人たちは後を絶たない。政府も自治体も、今回の火災を一運営会社の管理責任で終わらせず、現状の改善にこそ力を注がなければならない。

(2月3日)

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