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国民のものにするために NHKのこれから

 NHKが向こう3年間の経営計画を決めた。「公共メディアのある暮らし」を表題に掲げている。

 公共放送とされてきたNHKが「公共メディア」を目指す―。放送の枠を超えて情報事業の積極展開を目指すなら大きな転換になる。

 経営計画を手掛かりに、NHKの在り方を改めて考える。

 NHKを論じるとき、昨年12月の最高裁判決を外すわけにはいかない。テレビを持つ人に受信契約を義務付ける仕組みは憲法が保障する「契約の自由」に反しないかが問われた裁判だ。

 最高裁は次の理由から受信料制度を合憲と判断した。

 受信料の仕組みはNHKを民主的、多元的な基盤に基づきつつ、自律的に運営される事業体とし、公共の福祉のための放送を行うためのものであり、国民の知る権利を充足する目的にかなう―。

 判決は、NHKを特定の個人、団体や政府の影響から切り離すため広く公平に負担を求めたのが受信料制度だとも言っている。



   <公共メディアとは>

 放送を太い幹に、インターネットも活用して迅速なニュース、多彩な番組を届ける―。公共メディアの中身を、経営計画ではこんなふうに説明している。

 NHK内部の委員会は昨年、番組のネット常時同時配信を始めたときの受信料について報告書をまとめた。新たにネット受信手続きをした世帯にだけ受信契約を結ぶよう求め課金する、との内容だ。ネット配信は公共メディアの柱に位置付けられつつある。

 事業肥大化への批判は根強い。ネット配信にも進出する姿勢に民放は警戒感を強めている。

 経営は順調だ。内部留保に当たる繰越金は2020年度、600億円を越す見通しになっている。

 カネが余るなら受信料値下げで視聴者に還元すべきなのに「一回値下げすると再値上げは難しい」(石原進経営委員長)との理由で下げない。減免措置拡充でお茶を濁している。

 NHKの公共性とは何だろう。情報を国民に届けるルートをたくさん持つことなのか。

 かねて政治との近さが指摘されている。会長は経営委員会が選ぶ。経営委員は国会の承認を経て首相が任命する。もともと政府の影響力が及ぶ仕組みである。

 15年春まで委員を務めた上村達男早稲田大教授が、会長選びの実情を自著に書いている。会合の前日、新聞にある人物の名が「新会長に有力」と報じられそのまま決まった、と。

 経営委員も知らない場で会長が決まってきたのが実情だ。

 籾井勝人前会長は会見で「政府が右と言っているものを左と言うわけにはいかない」と述べ、批判された。不明朗な関係のあからさまな告白だった。

 政党、政治家や産業界から距離を置き、国民、視聴者重視に徹すること。ここでは公共性をそんなふうに考えておきたい。

 そのために何をしなければならないか。第一は運営の透明化だ。

 経営委員、会長選びを国民から見えやすくすれば、政治との不明朗な結び付きをある程度抑制できるだろう。具体的には委員、会長候補を国会に呼び所信を述べてもらうことなどが考えられる。

 第二に、より抜本的な対策として、放送の許認可権を扱う第三者機関の設置を考えたい。

 終戦後間もなく、戦争遂行の道具になったラジオ放送を政府から切り離すために、電波行政を扱う電波監理委員会がスタートしたものの、1952年の講和条約発効、主権回復とともに廃止された。政府が放送に関する権限を取り戻して今に至っている。

 国立国会図書館のリポートによると許認可権を政府が握る国は先進国では例外的だ。第三者機関に委ねるのが普通という。

 受信料収入はここ数年、過去最高を更新し続けている。不払いに対し、支払い督促など法的手段に訴えていることが大きい。

 ただし足元に目を向ければ、テレビを見ない人が若者を中心に増えている。共通の情報空間がなくなると国民が問題意識を共有するのが難しくなる。民主主義の危機につながる問題である。



   <予算案審議に注目>

 放送内容については、番組宣伝が多すぎる、民放まがいの演出が目立つといった批判が聞かれる。多様な価値観をすくい上げ、少数者のニーズに目配りする公共放送の責務を自覚しているのか、疑問が膨らむ現実がある。

 最高裁の判決はNHKに公共放送として特別の価値を認め、役割を果たすよう求めている。こたえる責任が重い。

 国会でNHKの予算案審議が始まる。公共放送はどうあるべきか踏み込んだ論戦を期待する。

(2月4日)

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