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米国の核戦略 力を振りかざす危うさ

 核廃絶への展望を一層見えにくくするばかりか、全面核戦争の危機さえ引き寄せかねない危うさをはらむ。米国のトランプ政権が打ち出した「核体制の見直し(NPR)」である。

 米国や同盟国が核兵器以外の手段で攻撃を受けた場合にも、報復に核兵器の使用を排除しない方針を明記した。先制攻撃での使用も否定していない。

 核戦略の中期的な指針として示した。オバマ前政権以来8年ぶりとなる。「核兵器なき世界」の実現を掲げた前政権の考え方を打ち消し、核戦力の増強と役割の拡大を図る姿勢を鮮明にした。

 戦力増強の柱は、小型の核兵器である。潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)に搭載する小型核弾頭のほか、新たな核巡航ミサイルを開発するという。

 大型の戦略核兵器は現実には使えず、抑止力になっていないとのいら立ちが背景にある。一方、局地的な攻撃に用いる戦術核兵器は「使える核」と称される。戦術核の配備を進めるロシアに対抗して新兵器の導入が検討され、中国の軍備拡大や北朝鮮の核開発も視野に指針は策定された。

 小型化により核使用の抵抗感が減ることは、意図の読み違えなどによる核攻撃の危険性を高める。たとえ局地的な攻撃であっても、相手が核保有国であれば、核による報復は避けられず、大規模な核戦争に至る恐れがある。

 ロシアや中国が核戦力を増強する口実にもなり、歯止めのない軍拡競争につながりかねない。北朝鮮の核開発をむしろ後押ししてしまわないかも心配だ。

 トランプ政権はまた、国連で採択された核兵器禁止条約を「非現実的な期待」と批判。包括的核実験禁止条約(CTBT)の批准も否定している。核廃絶に向け、被爆者や市民、非核保有国が積み重ねてきた努力に冷や水を浴びせる振る舞いと言うほかない。

 核拡散防止条約(NPT)は、保有国に核軍縮を誠実に進めるよう求めている。その責務をないがしろにすれば、NPTの空洞化は止まらず、核拡散は防げない。

 世界が再び核戦争の脅威にさらされる事態を招いてはならない。力を振りかざし、核軍拡を進める姿勢を米国は改めるべきだ。

 新たなNPRを日本政府が「高く評価」したことも納得できない。核保有国と非保有国の「橋渡し役」を担うと言いながら、米国の代弁者であり続けるなら、国際社会の幅広い信頼は得られず、被爆国としての発言力は損われる。

(2月6日)

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